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スレ住人の皆様 遊戯王系単発SS クロス元:遊戯王 294氏 無題(仮) 294氏 一発ネタ(仮) 301氏 1発ネタ 遊戯vsなのは 294氏 第?話 正義の味方?参上 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~前編~」 反目のスバル氏 リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~後編~」 反目のスバル氏 無題(仮) エラッタ氏 無題(仮) 三十七代目スレ403氏 キャロが千年リングを見つけたそうです TOPページへ このページの先頭へ
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―――10 スタースクリームが飛び立つ様子は、法王亡き後臨時に教会の全権を掌握した枢機卿会議 より、教会を占拠したメガトロン達の監視を命じられた教会騎士が目撃しており、直ちに 会議へ報告が送られた。 「判ったわ。それで、法王様は…?」 シャッハから報告を受けたカリムは、メガトロンを食い止める為に地下に留まった法王の 安否について尋ねる。 どう話すべきか思いあぐねたシャッハの様子に、カリムは何が起きたのか理解する。 「そう…」 カリムは寂しげな表情で一言呟いたきり、沈黙して目を閉ざした。 一方、管理局上層部はスタースクリームが何を目的にこちらへ向かっているのかを巡って 議論を繰り広げていた。 「まず最初に考えられるのは元老院だが…」 「…最高法院やここも目標に入っているかもしれん」 「戦略目標としてなら、市外北部のテダンガイル基地も含まれるな、至急基地に連絡して…」 「いや、だったら一番危ないのクラナガン沖に現在集結中の空母機動部隊だろ?」 スタースクリームの目的について意見を戦わせる幕僚たちを尻目に、ゲンヤは何気なく 呟く。 「奴が動き出したのは、ちびダヌキがGDどもへの攻撃を始めた直後だったな…」 ゲンヤの呟きを聞いたなのはは、敵が何を考えているのか突然悟った。 「はやてちゃんが…!」 なのはは目を見開いて呻くように言う。 その言葉を聞いたゲンヤと長官も、それが意味するものを瞬時に理解する。 「そうか、狙いは八神か!」 「高町一佐、急ぎ救援に向かえ!」 長官が鋭い声で命令を下すと、なのはは即座に敬礼して答える。 「了解しました、高町なのは一等空佐、直ちに出撃します!」 議論に熱中していた幕僚たちは、その横をすごい勢いで駆けて行ったなのはの後ろ姿を、 ポカンとした表情で見つめている。 「あ、あの…。長官、敵の意図が判ったので?」 恐る恐る尋ねてきた幕僚に、長官は冷静な口調で命令を下した。 「八神一佐に至急連絡を入れろ。眷属の狙いは一佐の命だ、すぐに後退して高町一佐と 合流するように…とな」 「は、はい! 直ちに」 命令を受けた幕僚は、なのはに続いてNMCCへと急ぎ駆けて行った。 ある程度ドローン部隊を叩き落として息が上がってきたはやては、自分のリンカーコアの 状態を改めてチェックする。 「よし、まだまだ行ける! リイン、次の目標は?」 “もうすぐ出ますです” ユニゾン中のリインフォースが攻撃目標の規模と座標を伝えようとした時、はやての右隣り に空間モニターが表示される。 「八神一佐、緊急事態発生です」 モニター内の士官が、緊張した面持ちではやてとリインフォースに状況の説明を始める。 「魔神の眷属が一体、聖王教会からクラナガンへ向けて飛び立ちました。狙いは一佐と推測 されます。 現在、高町一佐が救援に向かっていますが、相手の移動速度が早過ぎて間に合うか分かり ません、至急退避を願います」 「あともう少しでGD達を全部落とせるんや、ちょっと待って貰えへんか?」 はやてからの異議に対して、士官は後退を促す。 「その余裕はありません、直ちに退却して下さい」 はやてと士官の問答が続く中、護衛部隊の指揮官を務める魔導師が傍らにいる部下達へ 目配せする。 その中から鱗肌に長い触角と、大きい目に長い複数の口吻を持った魔導師が出てきてはやて に言葉をかけた。 「失礼致します」 「ちょっ…!」 抗議の声を上げる暇もなく、はやては護衛の魔導師にお姫様だっこで抱え上げられる。 はやての身柄を確保すると、魔導師部隊は最大限の速度で後方へ退却する。 「どこへ向かいます?」 一人が指揮官に尋ねると、指揮官は少し考えてから言う。 「まずは一刻も早く高町一佐と合流し、ここから一番近いテダンガイル基地へ向かおう」 「ウーオッ!」 魔導師達は、一刻も早くなのはと合流しようとより加速をかける。 一方、魔導師に抱え上げられたままのはやては、その腕から離れようとジタバタ暴れていた。 「ちょっと! ちゃんと自分で飛ぶさかい、ええ加減に離してや!」 そんなはやての抗議にお構いなく、魔導師部隊は自分たちの限界速度まで、いやそれ以上 を目指さんとばかりに更に加速する。 周囲の警戒に当たっていた魔導師の一人が、全員に警告する。 「八時の方向より未確認物体(アンノウン)が三つ接近!」 一瞬魔導師たちに緊張が走るが、モニターに味方である事を示す緑の表示とはやて直属の 守護騎士“ヴォルケンリッター”の面々の名前が出るのを見ると、ほっと安堵のため息を漏らす。 「主の護衛、感謝する」 シグナムが魔導師たちの労をねぎらう一方、紅いドレスとウサギのぬいぐるみの付いた帽子が 少女趣味なバリアジャケットに“グラーフアイゼン”と呼ばれるハンマー型デバイスを持った ヴィータが、険しい表情ではやてを抱える魔導師を睨みながら言う。 「おい、はやてに気安く触るんじゃねぇよ!」 その様子に、青のシンプルなバリアジャケットを着込み、がっしりした体格と顔立ちと獣耳 の組み合わせがアンバランスな印象を与える“盾の守護獣ザフィーラ”が、執り成すように 魔導師へ言葉をかける。 「ここからは私が引き受けよう」 ヴィータの剣幕に少々怯みがちだった魔導師は、頭を下げてはやてをザフィーラに託す。 「お願いします!」 「ザ、ザフィーラ! だから私は大丈夫やって!」 今度はザフィーラにお姫様だっこされたはやては、顔を赤くしながら抗議するも、またしても 取り合ってもらえない。 突然、その場に居る全員の空間モニターに、けたたましいアラーム音と共に緊急警報の表示が 現れる。 「眷属が成層圏より急速接近中!」 警報を受けた魔導師たちは、どこから接近して来るのか、眼を皿のようにして周囲を見回す。 「見えるか?」 「いや、どこだ!?」 接近して来る機影に最初に気付いたのは、ヴォルケンリッターの三人だった。 「上だ!」 彼女達の叫びに魔導師たちが頭上を仰ぐと、X字に翼を広げた戦闘機がいつの間にかそこに 在った。 それは彼等の眼前でたちまち変形を始め、あっという間に人間の形をした金属の化け物へと 姿を変える。 「いよう、人間ども!」 金属の怪物は、魔導師達の鼓膜を破らんばかりの大音声で、高らかに宣言する。 「冥土の土産に教えてやるぜ! デストロン軍団のニューリーダー、航空参謀スタースクリーム たぁこの俺様の事よぉ!」 「ミッド語…!」 自分達と同じ言葉を喋った事に、はやては驚愕の表情を浮かべる。 スタースクリームはまず、足を振り下ろして護衛の魔導師一人を叩き潰し、次いで二人目に 機銃弾を雨あられと浴びせて撃ち落とす。 「散開しろ! 一箇所に固まってたら全滅する!」 ヴィータの言葉を待つまでもなく、魔導師達は一斉に散らばり始める。 その間にもう一人を右腕で殴り倒したスタースクリームは、次の獲物をヴィータに定める。 背後に付いた魔導師がディバインシューターを撃ち込むも、これは苦もなく叩き落とされ、逆に ミサイルを喰らって粉々に吹き飛ばされる。 「このっ…! アイゼン!」 ヴィータは毒づくと、自らのハンマー型デバイス“グラーフアイゼン”に呼び掛ける。 “了解!” グラーフアイゼンはヴィータの呼び掛けに応えてカートリッジを一個装填すると、“ラケーテン フォルム”と呼ばれる、片側にスパイク、もう片方に噴射口付きのハンマーの形に変形する。 ヴィータが振りかぶると足元にベルカ式魔方陣が展開され、噴射口から魔力の炎が吹き出す。 「打ち砕け!!」 ヴィータは超高速で“ラテーケンハンマー”を振り抜く。 だが、スタースクリームはそれを難無くかわすと、逆に右腕からモーニングスターを展開して ヴィータを殴り倒す。 巨大な質量と桁違いの固さを誇る金属の拳をまともに受けたヴィータは、たまらず錐揉み状態で 墜落する。 「ヴィータ!」 はやては声を上げるが、ザフィーラがスタースクリームの攻撃を回避しようとジグザグ飛行を 行っているので、しがみつくだけで精一杯の状況だった。 「ここは私が何とかする、主の事は頼むぞ!」 「心得た!」 シグナムの言葉を受け、ザフィーラは全速力で現場を離れる。 「シグナムあかん! あの眷属は―――」 静止しようとするはやての言葉は途中で遮られた。 スタースクリームが立て続けに機銃弾を撃ち込んでくると、シグナムはシールドを斜めに展開して それを弾き逸らす。 スタースクリームはそのまま機銃を撃ち込み続けながら、戦闘機に変形して突っ込んで来る。 シグナムはギリギリまでタイミングを待ち、衝突する直前に横に跳んで回避する。 跳びながらシグナムはレヴァンティンを“シュランゲフォルム”という蛇腹剣様に変形させ、 スタースクリームへとその剣先を伸ばしていく。 スタースクリームは人間では到底不可能な急制動で旋回してその切っ先を避けるが、シグナムも レヴァンティンを巧みに動かして懸命に追いかける。 「ちいっ! しつこい剣だな!!」 スタースクリームは毒づくと、人型に変形して追って来るレヴァンティンを右手で掴む。 「!?」 予想だにしなかった行動にシグナムが驚きの表情を浮かべると、スタースクリームは厭味な笑い で返す。 そしてレヴァンティンを掴んだまま自分の身体をグルグル急激に回転させ、シグナムを強烈な遠心力 で振り回す。 “おい…シグナム! …大丈夫か!?” 身体にかかるGに必死に耐えながら呼び掛けるアギトに、シグナムも耐えながら答える。 「…私の方は大丈夫だ…それよりアギト…奴に体当たりをかけるぞ…!」 指示を受けたアギトは、ニヤリと笑って言う。 “OK! 炎熱加速!” その掛け声と同時にシグナムの背に炎の翼が現れる。 「レヴァンティン、モードリリース!」 “了解!” シグナムの命を受けたレヴァンティンは、蛇腹を収納して急速に剣の形の戻っていく。 スタースクリームとの距離を一気に詰めたシグナムは、そのままスタースクリームへ体当たりをかける。 「うおっ…!」 アギトの炎熱加速による身体強化と攻撃魔法の援護を受けたシグナムの体当たり攻撃は予想外に強力で、 弾き飛ばされたスタースクリームも思わず驚きの声を上げた。 その隙にシグナムは体勢を立て直し、全速力で後方へ飛ぶ。 それに負けじとスタースクリームも戦闘機に変形して後を追い掛けて来る。 背後からスタースクリームが急速に追い付いて来るのを確認すると、シグナムはアギトに声をかける。 “奴が追って来る。アギト、精密誘導の方を頼むぞ” “OK!” シグナムはまっすぐに飛びながらスタースクリームの方を振り向くと、レヴァンティンの鍔に鞘を合わせる。 すると、剣と鞘の両方からカートリッジが排挾されて“ボーゲンフォルム”と呼ばれる弓の形へ変形する。 次いで弦を引き絞る形に構えるとレヴァンティンの刀身の一部が矢の形になり、魔力光が矢を包み込んだ。 「駆けよ、隼!」 掛け声に気合いを込めて、シグナムは切り札“シュツルムファルケン”を放つ。 それを見たスタースクリームが機首を上に向けて急上昇すると、シュツルムファルケンもその後を追って上昇する。 スタースクリームは急上昇を続けながら、突然農薬を空中散布するかの様に大量のミサイルを全方向へ発射した。 ばらまかれたミサイルは魔力の矢に反応し、たちまち明かりに群がる虫のように殺到して一斉に炸裂する。 至近距離での爆発にシュツムファルケンも反応して、スタースクリームの遥か手前で自爆してしまう。 「なにっ!?」 切り札がミサイルによる弾幕で防がれた事にシグナムは驚きの声を上げる、それが彼女にとって 致命的な隙を作る事となった。 爆炎の中から飛び出して来たスタースクリームは、右腕を伸ばしてシグナムをガッチリと掴むと、 そのまま回転しながらクラナガン市街へ急降下する。 シグナムは抜け出そうと身体を動かしてみるが、金属の手はしっかりと閉じられており、身動きもままならない。 134 名前:魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS[sage] 投稿日:2011/05/10(火) 19 45 42.23 ID /EKkpuIZ [8/12] EW-TTの陰に隠れて小銃型デバイスのカートリッジ交換をしていた、上半身は白い牙が幾つも 生えた口に白い豚、下半身は電動車椅子という姿をした魔導師が何気なく空を見上げると、金属の 化け物が独楽のように回転しながら頭上目掛けて落ちて来るのを見た。 仰天した魔導師は、横で短機関銃型デバイスを構えて攻撃魔法をドローンへ撃ち込んでいる、身長 2メートル弱の浅黒い肌をした狼の姿の同僚の肩を叩いて叫ぶ。 「おい! 何か上から落ちて来るぞ!」 それを聞いた部隊の数人かが空を仰ぐ。 魔導師を片手に頭上目掛けて急降下するスタースクリームの姿に、陸士部隊はパニックに陥る。 「退避! 退避だ!」 部隊長の指示を待つまでもなく、魔導師たちはクモの子を散らすように逃げ出した。 スタースクリームはEW-TTの頭上スレスレで水平飛行へ移り、進路前方に立っていたドロップキックを左腕で殴り倒す。 「どけどけぇ! ニューリーダー様のお通りだぞ!」 周囲に破壊を混乱を撒き散らしながら、スタースクリームは大通りを超低空で疾走する。 音速以上の速度で飛んでいる為、進路上にある総ての建物の窓ガラスがソニックブームで粉々に砕け散り、 それを目の当たりにした人々が逃げ惑い、走行中の車輌がパニックで次々と衝突を引き起こす。 このままでは二人とも共倒れになる、そう判断したシグナムは、アギトとのユニゾンを強制解除する。 「シグナム!」 射出されたアギトの姿は、たちまちのうちに見えなくなる。 スタースクリームはその事に気付かぬまま―――気付いたとしても意にも介さなかったろうが――― 鼻歌混じりにシグナムへ声をかける。 「おい、人間! 俺様はこの街に来たばかりで全然地理に疎いんだ。 一つ道案内でも―――うおっ!」 前方への注意が疎かになっていたスタースクリームは、“危険物輸送中。可燃、注意”と言う警告文が 書かれた巨大なタンクを取り付けたコンボイトラックに頭から激突した。 スタースクリームの身体は大きく跳ね上がり、トラックの後ろにあったワゴン車や普通乗用車の上へ 仰向けに倒れ込んでぺしゃんこにする。 一方、弾みで放り出されたシグナムはフロントグラスを突き破り、トラックの運転席に叩き付けられる。 次の瞬間、破壊されたトラックから漏れる燃料と火花を散らす電気系統が接触してトラックが一瞬にして炎に包まれる。 更にそれは破損したタンクから流出した可燃物にも引火し、車全体が轟音と共に盛大に炎と破片を吹き上げる。 起き上がって周囲に誰も居ないか確認するかのようにキョロキョロ見回した後、スタースクリームは場を 取り繕うかのように派手に炎上するトラックを睨みながら、わざとらしい大きな声で笑いながら言った。 「へ…へへっ。流石のエース級魔導師もこれで永遠にGOOD NIGHT! HAHAHA!」 「シグナム!」 シグナムとの意識の接続が途切れた瞬間、はやては大声で叫んだ。 はやての様子から、囮となって敵の注意を引き付けていたシグナムが倒された事を悟った指揮官は、 傍らを飛ぶはやてを抱き上げていた魔導師に尋ねる。 「高町一佐はまだか?」 指揮官の質問に答えようとした魔導師が、突然爆炎に呑み込まれて墜落する。 全員が振り返ると、スタースクリームが厭味たっぷりな笑い浮かべながら、急速に距離を詰めて来る。 「全員八神一佐の前に回れ! 可能な限り眷属の進行を食い止めるんだ!」 「ウーオッ!」 そう言ってはやての前―――すなわちスタースクリームの射線上―――に立った指揮官の後に、護衛の 魔導師たちも続く。 「駄目や! 逃げ…」 はやてが呼び掛けようとした時、スタースクリームはミサイルと機銃とモーニングスターでもってして、 魔導師達を蠅の如く次々と叩き落としていく。 はやては怒りに燃える眼でスタースクリームを睨み付けた後、自分を抱えながらジグザグ飛行を続けるザフィーラに言う。 「真っすぐに飛んでもらえる?」 「主!?」 突然のはやてによる指示に、ザフィーラは戸惑ったように目を向ける。 「敵の攻撃目標は私なんやろ? なら、望み通りにしてやろうやないか。ただし、こちらの砲撃魔法を 零距離で叩き込んで、最悪相討ちに持ち込んでやるつもりやけどな」 剣歯虎のような笑みを浮かべるはやてに、ザフィーラは戦慄を感じた。 ジグザグ回避をやめて一直線に増速を始めたはやてとザフィーラを見て、スタースクリームは嘲りの声を彼らに掛ける。 「速さでこの俺様に敵うわけねぇって既に分かってるだろが!」 その言葉通り、スタースクリームは戦闘機に変形すると、二人との距離を急速に詰めて来る。 「そうや、こっちへ来ぃ…。ええ子やからこっちへ来ぃ…!」 はやては、真っすぐ突っ込んで来るスタースクリームを凝視しながら小さく呟くと、シュベルトクロイツの 柄をスタースクリームに向け、小さな声で永唱を始める。 「彼方より来たれ、宿り木の枝。 銀月の槍となりて、撃ち抜け…!」 更に距離が詰まってきた時、はやては溜めた魔力を一気に解放する。 「ミストルティン!」 その掛け声と共に五本の魔力の矢が、はやてのデバイスから放たれる。 それと同時にスタースクリームも急停止して同数のミサイルを放つ。 ミサイルはミストルティンに命中すると石化して墜落して行く。 「え…?」 ミストルティンが防がれた事より、まるでこちらの攻撃を予測したかのような相手の素早い対応に、 はやては呆気に取られたような声を上げる。 「へっ、馬鹿どもが! 先程の魔導師との戦闘でそちらの攻撃パターンはほぼお見通しなんだよ!」 スタースクリームは嘲笑うように言う。 「させん!」 ザフィーラは気合の声と共に自分たちの手前に厚い氷の壁を現出させる。 だが、スタースクリームにとってはベニヤの壁に等しく、体当たりであっさりと破られてしまう。 「その首もらったぁ!!」 雄叫びと共に、スタースクリームははやてとザフィーラに銃口を向ける。 “殺られる!” 迫り来る死を目前にしたはやては、本能的に目を閉じて身を固くする。 その次の瞬間、真上からミッド式防御魔方陣を展開させた人影が、二人とスタースクリームの間に 割って入って来た。 スタースクリームの撃ち出す機銃弾は、ことごとくその魔方陣に弾かれる。 「なにっ!?」 スタースクリームは驚きの声を上げる。 目の前の人影―――小学校時代の制服を基にした白いロングドレスのバリアジャケットにポニーテール の髪型をした高町なのは―――は、本局ビルへ簡潔に報告する。 「こちら“イーグルマザー”只今到着致しました」前へ 目次へ 次へ
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キャラクター スキル スキルは「ロングレンジパワー」「MPガード」 技性能 連続技
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―――5 聖王教会大聖堂。 遥か頭上の巨大なドーム上の天井には、魔力によって浮かんでいる水晶のシャンデリアがほのかな明かりを放ち、今はなき“ゆりかご”を中心に、 無数の星々がとそれらを仰ぐ次元世界の様々な生物が描かれた宗教画を照らし出している。 部屋を三百六十度囲むように配置されている窓には、聖王の守護騎士たちの絵をあしらったステンドグラスがはめ込まれ、入り口から見て真正面 には、粗末なローブに身を包み、右手に杖を持ち左手は天を指差す、白く長い髪と髭の狂気を孕んだ眼を持つ眼鏡の男“聖王”の巨大なステンド グラスが、圧倒的な迫力を放っている。 聖王が示す先には、透明なガラスの日輪をイメージした丸い穴があり、そこから差し込む陽の光が、重厚な装飾の施された大型のパイプオルガン を演奏する、金髪にカチューシャをつけた、ロングスカートのドレスを着た女性を照らし出していた。 「今日の騎士カリムが弾く曲は、いつにも増して素晴らしいですな」 顔中碁盤の目の如く縦横に彫られた刺青の線と、線の交点総てに金属製の釘のような角が生えたに修道士が、おかっぱ風の髪形の修道女に言った。 彼女は、一心不乱に演奏する聖王教会騎士カリム・グラシアを、不安げな表情で見つめている。 「シスターシャッハ、どうかされましたか?」 修道士の問いかけに、教会シスターのシャッハ・ヌエラは我に返って振り向く。 「何だか、騎士カリムの様子がおかしくないですか?」 「様子…ですか?」 怪訝な顔で修道士が言うと、シャッハは頷いて先を続ける。 「今の演奏には、何かに追われているかのような切迫感が、私には感じられるのですが…」 シャッハの言葉に、修道士は目を細め、床に視線を向けながら考え込む。 「確かに、騎士カリムは何かに憑かれたように必死に演奏されてますが、それはいつもの事ですし、シスターの考えすぎ―――」 修道士がそこまで言ったとき、それまで流暢に流れていたオルガンの重厚なリズムが、突然両手を鍵盤へ叩きつけたかのような不協和音に取って 代わられた。 驚いた二人がが振り向くと、カリムが肩で息をしながら呆然と宙を仰いでいるのが見えた。 唐突な出来事に、それまで厳かに祈りを捧げていた信者たちがざわめく中、カリムは呆然とした表情のまま、聖王のステンドグラスへと視線を向ける。 「騎士カリム!?」 ステンドグラスを凝視したまま何事かブツブツと呟くカリムに、シャッハが恐る恐る声を掛けてみた。 カリムはピクッと身を震わせると、今度はシャッハの方へ顔を向ける。 シャッハの方を向いているのに何も見ていない虚ろな瞳に、二人が戦慄を覚えた瞬間、カリムは白目を剥いて両膝を付いた後、横向きに倒れこむ。 「騎士カリム!!」 シャッハが倒れたカリムへと駆け出したのをきっかけに、聖堂内は騒然となった。 三m近い身長の、平べったい顔に三白眼に細長い胴体がゴキブリを髣髴とさせる、六足歩行の管理局将校が前足を動かして空間モニターを操作すると、 電磁ロックの外れる音がして自動ドアが開き、ゲラー長官以下管理局首脳陣が現れる。 「盗まれたデータは何か分かったか?」 向かい側の、総ガラス張りになっている会議室へ歩きながら長官が尋ねると、将校は触角と首を横に振りながら答える。 「まだ不明ですが、管理局はおろか最高法院や元老院のかなり深部まで探られたのが判明しました。 現在は、機密性及び重要性の高いファイルとプログラムをネットワークから分離する作業にかかっています。 完了次第、ベルカ自治領にある非常時用のバックアップコンピュータに移す予定です」 「ネットワークに侵入しているウイルスについては?」 長官の次なる問いかけに、カタツムリに大きい眼と牙をつけたような姿をした将校が答える。 「技術部が調査しておりますが、ワームと似ている以外はまったく不明です。 というのも、分析や駆除をしようとすると、ウイルスが処理プロセスを解析して対抗策を編み出している所為です」 「…で、思い余って“無限書庫”に、同じものがないかどうか問い合わせたんです」 様々な階級・種族の武官・文官たちが忙しく動き回る廊下を歩きながら、シャーリーは一緒に歩いている機動一課首都公安部特別捜査官の八神はやて 一等陸佐と、なのはの二人に話していた。 「何か分かったんか?」 はやての問いかけに、シャーリーは首を横に振った。 「いえ、手がかり一つも見つかっていないと聞いています。調査は続行するそうですが…」 「ユーノ君のところでも見つからないなんて…」 シャーリーの返答に、なのはは驚きの表情を見せた。 「“世界の記憶を収めた場所”と言われる無限書庫で、そんな事があるんかいな?」 はやてが首を傾げた時、彼女の左肩に乗っている身長30cmぐらいの腰まで伸びたラベンダー色の長髪に、前左側にはやてと同じヘアアクセサリーをした つぶらな瞳の十代前半の少女に見える小型亜人種生物が、外見相応の子供っぽい声で言った。 「ありえない事ではないですよ」 「リイン曹長、どういう事ですか?」 シャーリーが質問すると、首都公安部特別捜査官補のリインフォースⅡ曹長は、はやての肩から飛び上がり、三人の前を滑空しながら身振り手振りを 交えて説明を始める。 「まず考えられるのは、敵対勢力の故郷である世界が既に滅びているケースです。 この場合、記録や文献の殆どは滅亡時に失われてしまうので、実態を把握するのは極めて難しくなります」 「古代ベルカと同じ…か」 はやてが言うと、リインは嬉しそうに顔を輝かせる。 「ご名答です、流石はやてちゃん♪」 大げさにリインが手を上げた次の瞬間、彼女のすぐ横を、身長一.三mで短い象のような鼻に不揃いな牙を生やした口とずんぐりした体型の局員が、二枚 の小さな羽を忙しく動かし、かなりの速さで通り過ぎた。 「バカヤロー! 後ろ向いて飛んでんじゃねぇ!」 悲鳴を上げて跳び上がるリインに、局員は罵声を浴びせて飛び去る。 慌ててはやての肩に戻ったリインに、なのはが質問してきた。 「もう一つ考えられるケースって何?」 リインは気を取り直すと、なのはの問いに答え始めた。 「あ、はい。ええとですね、敵勢力の起源が古過ぎて、データがまだ整理されていないケースです」 四人はいつしか、ゲラー長官たちが討議をしている会議室の近くまで来ていた。 「何しろ“無限書庫”ですからねぇ…私たちの探索がまだ及んでいないデータがあっても不思議ではないです」 突然、はやては歩くのを止め、腕を組んで考え事を始めた。 「はやてちゃん(さん)?」 三人が訝しげに声をかけるのにも応えず、はやてはぶつぶつ呟きながら思案を巡らせる。 「無限書庫で見つからん、自己進化するプログラム…。 …リインの言う通りだとすると…? …ありえるな。いや、しかし…」 突然、はやては何か意を決したような表情で顔を上げると、なのはとシャーリーの手を取る。 「三人とも、これは何が何でも上に報せんとあかんかも知れん。 危険な橋を渡る破目になるかも知れんけど、責任は私が取るさかい堪忍してや」 そう言うなり、はやてはなのはとシャーリーの手を取って会議室へと入る。 突然の出来事に、三人は声を上げる事もできなかった。 会議室内部では、幕僚たちの意見が紛糾しており、外からなのは達四人が闖入して来た事にまったく気付かない。 「ちょ…! ちょっとはやてちゃ――」 「しっ!」 なのはが文句を言おうとした時、はやては人差し指を自分の口に当てて黙らせ、議論を続けている首脳陣へ向けて、顎をしゃくる。 「我々にこれほど大規模な攻撃を仕掛けられる敵となると…」 会議室中央部の席に座ったゲラー長官が両手を顔の前で組んで考え込み始めた時、その前に立っている大きなギョロ眼に鼻のない、眉間に皺を寄せた蛙 みたいな顔の将官が、くぐもった声で意見を述べる。 「まず間違いなく“分離主義者”を剽窃する身の程知らず共に違いありません。 即刻機動一課を動員して、主要メンバーを一網打尽にすべきと考えます」 蛙顔の意見に対して、老人のような顔付きをした首が長くて寸胴の将官が、細長い手を振り回して反論する。 「確たる証拠も無しに、いきなり逮捕するのか!? それはミッドチルダの建国理念を否定する愚挙だぞ!!」 「愚挙だと!?」 蛙顔は激高し、大きな怒鳴り声で老人顔に食って掛る。 「自らの身を守れぬ愚か者共が、我らと対等の権利を求める方が愚挙ではないのかね!? 我々の保護下で生活できるだけでも、余りある恩恵だと言うものだ!!」 「貴様は古代ベルカ人か!? 力に驕って滅びた彼らの台詞だぞ、それは!!」 つかみ合い寸前の両者の間に、一つ目で六本の触手状の腕を持つ将官が割って入る。 「まぁまぁ、今の言葉は幾ら何でも言い過ぎだとして、第738管理外世界で、分離主義者と反管理局武装勢力が結託して一触即発の情勢という報告が 入っているのは無視出来ないと思いますが、どうですか?」 「お言葉ですが、今回の一連の事件と、それとは無関係だと思います」 その言葉に、それまで激論を戦わせていた幕僚たちがはやてに振り向く。 「何だね君は!?」 蛙顔の将官が胡散臭そうな表情で睨みながら言うと、はやては彼に敬礼して自分の身分を名乗る。 「陸上部局機動一課首都公安部特別捜査官、八神はやて一等陸佐であります」 それを聞いた途端、幕僚たちのうち数人の表情が一気に不快感を顕にしたものに変わり、何人かはヒソヒソと話しこむ。 「八神一佐、我々は今、ミッドチルダの安全保障に関わる重大な会議を行っているところだ。 佐官クラスと言えども、この場に居る権限はないのだぞ」 嫌悪感を露わに言う蛙顔の将官に、はやては怯まずに言う。 「それに関する極めて重大な情報がありまして、無礼を承知で参りました」 必死に食い下がるはやてへ、まぶたが眉のように垂れ下がった、石仏のような彫り顔に黒土の肌色をした将官がやって来る。 「それならば、部局長のベイラム大将に話を通してからになさい」 彼は、なのは達のほうを振り向いて言った。 「君たち、八神一佐を連れて出てってもらえるかな?」 なのはとリインは頷くと、なのはがはやての右腕を、リインは左肩を掴んで外へ連れ出そうとする。 「はやてちゃん、早く行こう」 「そうですよはやてちゃん」 二人に引っ張られながら、はやては首脳陣に大声で呼びかける。 「今回のクラッキング攻撃の第一発見者をここに連れてきました!! 現在、ネットワークを侵食しているウイルスについても、一番情報を持っております!!」 「待て!」 ゲラー長官が立ち上がって鋭い声で言うと、なのはとリインはビクッと身をすくませて動きを止める。 「第一発見者…と言ったな?」 はやては頷くと、事の成り行きを呆然と見ていたシャーリーの方を振り向く。 「シャーリー」 「え!? は、はい!」 はやてに呼ばれたシャーリーは、緊張気味にゲラー長官へ敬礼して自分の身分を名乗る。 「陸上部局技術部士官、シャリオ・フィニーノ三等陸曹であります。 タイコンデロガにてマリエル・アザンテ技官と共にセギノール基地のクラッキング信号を解析していた時、敵のネットワークへの侵入を発見いたしました」 ゲラー長官は、左横の一つ目ヒトデ型生物の将官へ振り向く。 「間違いないか?」 ヒトデの将官は、空間モニターを開いて事件当日の記録を確認する。 「はい、確かに敵のクラッキング信号の第一発見者として名前が載ってあります」 ゲラー長官はシャーリーに再び顔を向けた。 「話を聞こう」 シャーリーは一呼吸入れて気分を落ち着けてから、話を始める。 「今回の事件で私が指摘したいのは、侵入者がネットワークへ入り込むまでにかかった時間は、僅か十秒であると言う事です」 シャーリーはそこで一旦言葉を切り、幕僚たちの反応を見る。 ゲラー長官が真剣に聞き入っているので、幕僚たちも神妙にしている。 話を続けて大丈夫と判断して、シャーリーは再び喋り始める。 「総当り法による正面攻撃では、最新鋭のスーパーコンピュータでも突破するには最低二十年は掛るよう設計されているファイアウォールがあるにも 関わらず、たったそれだけの時間で突破されてしまった」 鬼のように角が二つ突き出た、紅いつり目に皺だらけの顔の将官が、シャーリーに言う。 「で、君たちは何を言いたいのかね!」 シャーリーが振り向くと、はやては頷いてシャーリーの前に出てくる。 「要するに、今回我々管理局が相対している敵は、技術の粋を集めて構築された鉄壁の防御を誇るネットワークを、僅か十秒で難なく突破できる相手 であるという事です」 はやての助けに力を得たシャーリーは、ここぞとばかりに一気に喋り始める。 「しかも敵がネットワークに放った信号は自己学習し、絶えず変化と進化を繰り返しています。 これは、我々が普段使っているフーリエ変換と同じに考えるべきことではありません、むしろ量子力学の領域かも知れない」 ここで一呼吸入れた後、シャーリーは結論を結ぶ。 「私の見解を言いますと、あのウイルスプログラムは、コンピュータと同じ学習能力とバクテリア並の強力な増殖力を持つ一種の生物であります。 分離主義者による犯行と考えるには、余りにも高度すぎると思いませんか?」 シャーリーの意見に、かぼちゃのような大きな頭と怒り肩のような瘤が両肩に付いた将官が、呆れたように首を横に振りながら異を唱える。 「君たちはどうもドラマと現実を混同しているようだな。 いいかね? 管理内外の全次元世界内に、そんな複雑かつ即応性の高いシステムを持つ世界など存在せんのだよ」 それに対して、はやてが幾分感情的になりながら反論する。 「我々が知りうる世界ではそうでしょう。しかし、今まで存在を知られていない未知の次元世界から来たとしたらどうでしょうか? 現在までに確認されている次元世界は推定五千億、管理局が把握しているのはそのうちの0.005パーセントの二千五百万、更に管理内外のランク 付けが完了しているのは0.005パーセントの千二百五十。 世界のほんの一端しか知っていない―――」 そこまで言いかけたとき、ゲラー長官が二度両手を叩いてはやての話を遮った。 「わかった、もういい充分だ」 話を途中で遮られて不機嫌そうなはやてと、 「八神一佐、フィニーノ陸曹、君らの意見はよく分かった。だが、分離主義者の脅威がすぐそこに迫っている現状で、未知の勢力についてあれこれ 論じている余裕は我々にはない。 君らの仮説を裏付ける証拠が見つかった時、また話を聞かせてもらおう。 だが、それまではいたずらに騒ぎ立てないで欲しい、ここで話した事ももちろん他言無用だ」 長官は背後を振り向いて声をかける。 「ギーズ一佐、彼女たちを送ってもらえないか?」 首脳陣の後ろにずっと控えていた、片顔が隠れるほどの長髪に精悍かつりりしい顔立ちの、はやてと同じ佐官用の制服を着た白人、シャルル・ド・ ギーズ一等陸佐が、長官の言葉に前へ出てくる。 「私も、ちょっとご一緒してよろしいですか?」 それまで事の成り行きをじっと静かに見守っていたゲンヤがそう言って立ち上がった時、はやてはビクッと身を竦ませた。 ゲラー長官がゲンヤに頷くと、ギーズ一佐はドアを開けて退出するよう促す。 なのは達は敬礼して会議室を退出する。と、入れ替わりに通信将校が駆け足で部屋へと入って行き、長官に敬礼して何か報告を始めた。 外へ出てしばらく歩いた後、突然ゲンヤははやての頭を軽めながらも、拳骨で殴った。 「バカヤロ。お前、幾らちびダヌキでも、今回はムチャし過ぎだぞ」 両手で頭を押さえ、涙目になりながらはやては言う。 「す、すみません。でも、この話はどうしてもしとかないと、無関係の次元世界で戦争になりかねないと思って…」 「そん時の為に俺が居るんだ、何もお前が心配する必要はなかったんだぞ」 厳しい表情で言うゲンヤに、はやての反論も尻つぼみになる。 「は、はい…」 「それに、騎士カリムやクロノ提督の立場も考えろ。ったく、高町とフィニーノのお嬢まで巻き込みやがって」 「うう…」 すっかりしょげかえったはやてと不機嫌に腕を組むゲンヤに、ギーズ一佐が取り成すように 「まぁまぁ、ナカジマ少将。長官は彼女たちの話に興味を持たれたようですから、あながち無駄ではなかったと思いますよ」 その言葉に、はやては相好を崩してギーズにすがり付く。 「ギーズ一佐、ありがとな~。あんたは私の恩人や~」 ナカジマ少将は困った表情で額を押さえ、目を閉じながら言う。 「ギーズ一佐、あんまりちびダヌキを甘やかさないでくれ。増長されて元老院まで行かれてはかなわん」 「以後は自重しますよ」 肩をすくめて会議室へと戻るゲンヤへ敬礼を返すギーズに、今度はなのはがやって来て右手を差し出して握手を求める。 「ギーズ一等陸佐ですね、噂は聞いております。陸上部局のストライカー級魔導師として勇名を馳せているとか」 ギーズ一佐は、なのはと握手しながら笑って言う。 「エース・オブ・エースに名前を覚えていただけるとは、光栄の極み」 なのはとギーズのやり取りを横目に、シャーリーは何か深く考え込んでいる。 その眼には危険な光が宿っている事に、誰も気付かなかった。 前へ 目次へ 次へ
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リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)~後編~」 『グウウウウウウウウウ…』 唸りと共に、生暖かい吐息が高町なのはの顔をなでる。 3つの首が、6つの青い目が、じっとその顔を見つめていた。 青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)。デュエルモンスターズ史上、最も偉大なドラゴン。 強さ、雄雄しさ、神々しさ…全てを内包したその巨体が、なのはとフェイトの目の前にあった。 動けない。 見開いた目は、まばたきすらできない。口を開け、声を発することすらできない。 怖い。 そんな感情を抱いたのは、もう何年ぶりのことだろう。 どんな巨大な敵にも、臆せず立ち向かってきた。どんな辛い目に遭っても、迷わず前進してきた。 だが、この敵は違う。 身体中の全神経が警告を発している。勝てないと。どう足掻いても、人間にどうこうできる相手でないと。 否、それだけならば、まだ無謀なりに戦いを挑むこともできただろう。 それだけでなかったのが問題なのだ。 勝てる勝てない以前に、怖れている。目の前の敵を。 怖い、怖い、怖い…怖くて怖くてどうしようもない。恐怖が身体をしばりつける。 エース・オブ・エースは、完全に目の前の究極竜に圧倒されていた。 「ワハハハハ! どうだぁぁぁ!」 眼下のカイバーマンが、再びあの高笑いを上げる。 「これぞ史上最強にして、華麗なる殺戮モンスターの姿だ!」 攻撃力4500、守備力3800。今までの低レベルモンスターとは明らかに次元の異なる力。 かつてデュエルモンスターズの頂点に君臨した「三幻神」すら脅かす力。 「ククク…最強のドラゴンを前に、臆して声すら出ないか」 図星を突かれても反応することすらできない。それほどまでに、なのはは追い詰められていた。 「ならば、その身でとくとその力を味わうといい!」 青眼の究極竜の3つの口が光を放つ。 全てを破壊する滅びのバーストストリームが束ねられ、巨大な光球と化した。 「アルティメットバァァァァーストッ!!!」 爆音が轟いた。 これまでに経験したことのない熱量と質量が、圧倒的な破壊力となってなのはの元へと殺到する。 「なのはっ!」 間一髪で我に返ったフェイトが、なのはを伴ってその一撃を回避した。 アルティメットバーストは虚空を直進し、僅かにアカデミアの校舎を掠める。 校舎のガラスが、衝撃波で次々と粉々に砕けていった。 恐ろしい破壊力だ。やはり見かけだけではないということか。 仮にアカデミアの全ての人間がこの場にいたとしても、青眼の究極竜ならば全て灼き殺すのに数分とかかるまい。 『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!!』 3つ首の竜王は、再びあの雄たけびを上げた。 「なのは…大丈夫?」 フェイトがなのはを気遣うように言う。 自身もあの圧倒的な力を前に戦慄していたというのに、大した気丈さだ。 同時に、なのはの中に1つの疑問が生まれた。 何故フェイトは回避行動を取れたのに、自分は1歩も動けずにいたのか? 感じていた恐怖は、なのはもフェイトも同じはずだった。ではそこにあった差は何だったのか。 あの時、自分が感じていたのが、恐怖だけではなかったとしたら…? (…あぁ、そうか…) その仮定が脳裏に浮かんだ瞬間、疑問は全て氷解した。 自分は、恐怖故にその身を縛られていただけではない。もっと別の感情が、同時に自分をあの場に押し留めていたのだった。 「…ふつくしい…」 思わず、呟いていた。 なのはは究極竜に恐れを抱くと同時に、その姿に見惚れていたのだ。 全身から発せられる、凄まじいまでの殺意と尊厳、そして力。 戦う者が持つべき全てを凝縮した、正に究極の戦士の姿。 青眼の究極竜は、なのはの中に宿る武士(もののふ)の心を揺り動かしたのだった。 「えっ…?」 事情を理解できないフェイトは、怪訝そうな顔をしている。 「…ごめん、フェイトちゃん。少しだけ、私のわがままに付き合ってくれる?」 『Exceed mode.』 レイジングハートの声が響き、なのはのバリアジャケットが変形した。 「なのは…?」 突然の全力解放に、フェイトは戸惑いも露わな声を上げた。 「どうしても、あのドラゴンと戦いたくなった!」 戦ってみたい。 敵わないにしても、自分の力がどこまで通じるのか試してみたい。 10年以上に渡って磨き続けた自分の魔法に、究極のドラゴンはどう応えるのかを見てみたい。 何より、自分は1人ではない。ならば… 「力を貸して、フェイトちゃん」 2人ならば、どこまで行けるのか。 なのはの瞳からは恐れが消え、異界の神にふれた喜びと、未体験の戦いへの高揚感に満ちていた。 「…止めても無駄なんでしょ?」 やれやれといった様子でありながらも、その顔に浮かぶのは穏やかな笑顔。 フェイトもまた、バルディッシュをザンバーフォームへと変形させる。 「行くよ、フェイトちゃん!」 「ええ!」 2人のエースが、巨大な竜目掛けて突っ込んだ。 「ククク…そうだ、そうでなくては面白くない! 迎え撃て、究極竜!」 カイバーマンもまた歓喜の声を上げ、青眼の究極竜へ指示を出す。 向かってくるなのは達は二手に分かれ、なのは上方、フェイトは下方から肉迫した。 3つの頭それぞれが滅びのバーストストリームを放ち、2人の魔導師を狙い撃つ。 両者はそれらの間を縫うように、素早い動作で避けていく。 「はあぁぁぁっ!」 遂にフェイトが敵の懐へと到達し、バルディッシュの金色の刃を振り下ろした。 対する究極竜は、その太く長い尾をしならせ、閃光の戦斧を殴りつける。 「くぅぅっ…!」 青眼の究極竜の尾は、びくともしなかった。 守備力3800を誇る竜鱗は、普通に斬りつけた程度では到底貫けるものではない。 加えて、その筋力だ。尾の形を成した巨大な塊は、じりじりとフェイトの身体をバルディッシュごと押していく。 一方のなのはは、3つ首の正面まで迫ると、真っ向からレイジングハートを構え、魔力をチャージする。 「ディバイィィィーン…バスタァァァァァァーッ!!!」 掛け声と共に、極太の魔力の線が、ドラゴンの頭目掛けて放たれた。 『グオオオオオオオオオオオッ!』 無論、黙って喰らってやるほどこの究極竜は穏やかではない。 中央の頭がバーストストリームを撃ち、ディバインバスターと激突させる。 先ほどのスバルと異なり、威力は完全に拮抗状態。桃色と水色の波動が、空中で正面衝突していた。 そこへ、右の頭から追撃のバーストストリームが撃ち込まれ、バランスは崩壊する。 2つのエネルギーは接触面で大爆発を起こし、なのはの身体を突風で煽った。 更に左の頭が、駄目押しのバーストストリーム。 「きゃああぁぁぁぁぁっ!」 辛うじてなのははプロテクションを展開したが、その衝撃全てを相殺するには至らず、盛大に吹き飛ばされる。 否、そもそもこの防御が成功したこと自体が偶然だった。次も同じように守れるはずがない。であれば防御は捨てるしかない。 (フェイトちゃん!) 普通にやり合っても勝てないという当然のことを再認識し、なのはは念話でフェイトを呼び戻した。 (どうするの、なのは!?) 巨大な尾から逃れつつ、フェイトは合流を急ぐ。 (1人1人の攻撃では、どうやっても傷1つつけられない…なら駄目もとで、一点同時攻撃しかない!) (…分かったわ、やってみましょう!) 遂に2人は並んで宙に浮き、なのははデバイスを構え、フェイトは左手を突き出す。 『Load cartridge.』 カートリッジが3つ連続でロードされた。両者の足元に、桃色と金色の魔法陣が浮かぶ。 この時、フェイトは確かに横目で見ていた。 なのはの顔に、かつてシグナムとの模擬戦で垣間見せた、凄絶なまでの笑みが浮かんでいたことを。 高町なのはは、修羅と化していた。 「エクセリオォォォーン…バスタアァァァァァァーッ!!!」 「トライデントスマッシャアァァァァァァァァァーッ!!!」 桃色の一直線の波動と金色の3つの波動が、複雑に絡み合い、青眼の究極竜を貫かんと迫る。 「ほぉう…確かにそれならば、究極竜に手傷を負わせることもできるだろう。…だが!」 カイバーマンの声を、大爆発がかき消した。 凄まじい閃光が周囲に満ち、なのはとフェイトの視力を奪う。 光が晴れた頃には、そこにはあの小山ほどの巨体を持った竜の姿は、跡形もなかった。 「やったの…?」 信じられないといった様子でフェイトが呟く。 そうだ。これはおかしい。 元より、今の一撃で青眼の究極竜を倒せるなどとは思っていない。 そこから開いた突破口をこじ開け、撃破するつもりだったのだ。それが何故、こうもあっけなく姿を消したのか。 『…グオオオオオオオオオオオオオオオオオン!』 答えはすぐに判明した。 気がつくと、なのは達の背後には、あの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。 それだけではない。斜め右前に2体目、さらに左前に3体目が姿を現した。 「速攻魔法・融合解除を発動した!」 攻撃の寸前に分裂した3体の青眼(ブルーアイズ)が、完全になのは達を取り囲んでいた。 「ククク…十代はこのコンボで俺と青眼に敗れた。さぁ、貴様らはどう切り抜ける?」 余裕たっぷりにカイバーマンが問いかけた。 答えるまでもない。戦うだけのこと。 それどころか、この状況は、なのはにとっては正に望むところだった。あれだけで倒れてしまうようでは張り合いがなさすぎる。 「一斉射撃をお見舞いしてやれ、青眼!」 分かりきった答えを聞く前に、カイバーマンは竜達へ号令を出した。 三方向から、あの滅びの光がなのは達に迫る。 「フェイトちゃん!」 「分かってる!」 意志疎通を図るまでもなかった。2人は瞬時にその場を離れ、行き場を失った砲撃はぶつかり合って爆発する。 なのはは3体のうち1体に狙いを定めると、レイジングハートを構えて攻撃を仕掛けた。 「ディバイィィィーン…バスタァァァァァァーッ!!!」 再び放たれた桃色の光が、青眼の白龍を狙い撃つ。 『ギャオオオオオオオオオオオオオオオッ!』 直撃を受けた青眼の白龍は、苦しげな声を上げて悶えた。 融合を解除したことで、個々の守備力は今や2500まで落ちている。これならば、何とか1人でも対応できた。 『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!』 と、背後から2体目のドラゴンの口がなのはへと殺到した。どうやら彼女を飲み込もうとしているらしい。 とっさにレイジングハートを支えにし、その口をふさぐものの、このままでは身動きが取れそうにない。 青眼の白龍は、凄まじいまでの顎の力で、なのはの身体を噛み砕こうとしていた。 「クロスファイア…シュートッ!」 なのはは右手から4つの魔力弾を放った。ドラゴンは苦しみもがき、彼女を吐き出す。 体内めがけて撃ち込むというあまりにあまりな攻撃法に、少々罪悪感を抱いたものの、そんなことは言っていられなかった。 一方のフェイトは、バリアジャケットをソニックフォームへと変形させ、最後の青眼の白龍へと迫っていた。 レオタードを思わせる軽装のソニックフォームは防御力を大幅に落とすが、 元々避けて当てるタイプのフェイトには大した問題でもない。 そもそも、今回は相手が相手だ。一撃でも直撃しようものなら、インパルスフォームでも即刻あの世逝きである。 『グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』 雄たけびを上げ、青眼の白龍はバーストストリームをフェイト目掛けて放つ。 「撃ち抜け、雷神!」 『Jet Zamber.』 バルディッシュから衝撃波が放たれ、バーストストリームを一瞬押し留めた。 続けて延長された長大な刃で、真っ向からその光を斬り裂きにかかる。 「はああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!」 気合いと共に突き出された刃が、滅びの光を掻き分け、遂にドラゴンの身を捉える。 『ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!』 強烈な斬撃を受け、青眼の白龍は鼓膜をつんざくかのような悲鳴を上げた。 なかなかのダメージを与えることはできたが、まだまだ戦うことはできるらしい。フェイトはバルディッシュを握りなおす。 「戻れ、青眼!」 と、そこへカイバーマンの指示が響いた。 すぐさま3体のドラゴンは、彼の上空へと引き返す。 なのは達もまた合流し、距離を置いて青眼の軍団と相対する。 「…よくぞここまで戦い抜いた」 カイバーマンからかけられた言葉は、意外にも賞賛だった。 「貴様らの力、そして闘志…この目でしかと見届けさせてもらった。まさか青眼をここまで追い詰めるとはな」 そこまで言い終えると、彼の口元がにぃと歪む。 「その褒美として、最大最強の一撃を以って幕としてやろう!」 カイバーマンはデッキから、新たなカードをドローする。 「ククク…十代と戦った時の俺では、よくてここまでが限界だった。 …だが、俺は最早あの時とは違う! 過去とはただの足跡に過ぎん! 装備魔法・再融合を発動!」 「馬鹿なっ!?」 オブライエンが叫びを上げる。 再融合はライフを800ポイント払うことで、融合モンスターを蘇生させるカード。この戦いで消えた融合モンスターと言えば… 「再び舞い戻れ、青眼の究極竜! 3体の青眼の白龍と共に…その怒りの業火で、全ての敵をなぎ払うがいいッ!!!」 悪夢。 まさに目の前の状況は、それ以外の何物でもないのではないか。 逆に言えば、これほどまでに分かりやすい「悪夢」など、そう簡単には存在しないのではないか。 ――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッ!!! 青眼の究極竜が咆哮する。 ――ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! ――グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! ――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ! 3体の青眼の白龍が合唱する。 なのは達の目の前には、6つの同じ顔があった。 ―青眼の究極竜― 攻撃力4500 防御力3800 融合モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター ―青眼の白龍― 攻撃力3000 防御力2500 通常モンスター 合計攻撃力、13500。 最早ありとあらゆる手立てが、まったくの無意味だった。 今更ライオットフォームを起動したところで、何の足しになるだろう。 今更ブラスターモードを発動したところで、何が変えられるのだろう。 絶対的な力、恐怖、絶望。 否、それらの言葉で語ることが、もはや無意味であった。 最も尊いドラゴンが3体に、神にも等しきドラゴンが1体。 こんな状況を、言葉を尽くして語ろうというのが馬鹿げている。言葉はそこまで高尚なものではない。 なのは達は覚悟を決めた。 「よくぞ俺にこの手を使わせた。…ククク…今一度褒めてやろう」 「どうも」 冷や汗を浮かべながら、なのはは皮肉を返す。 「では、これで終わりだ! その力を示せ、青眼の竜達よ! この世の全てを打ち砕く、絶対的な破壊をもたらしてやれ! バーストストリーム6連弾ッ!!!」 6つの頭が、一斉に光を撃ち出した。 なのは達の一点射撃を再現するかのように、バーストストリームが混ざり合い、1つとなる。 大気さえも焦がすかのような攻撃。否、最早攻撃ですらなかった。 これは天災だ。 4体の竜によってもたらされた、避けようのない天災だ。 (来る!) なのは達は固く目をつぶる。 「――トラップ発動! 攻撃の無力化!」 一瞬と経たず、2人の女性を残らず蒸発させるかと思われた一撃は、しかしその手前で押しとどめられた。 「――マジック発動! 光の護封剣!」 続けて、青眼の白龍達を、天から降り注ぐ無数の光剣が遮る。 「…これは…?」 なのは達は目の前のことについていけず、思わず周りを見回した。 ふと下を見ると、そこには、2枚のカードをデュエルディスクにセットした十代の姿。 「十代君…!」 「へへっ、危ないところだったな」 元気に笑うと、十代はカイバーマンへと視線を向ける。 「もういいだろ、カイバーマン? 勝負はなのはさん達の負け、アンタの勝ち。アンタも満足できたみたいだしな」 「チッ…余計な真似を」 カイバーマンは不満げに反論する。 「どうかな? ホントは、俺ならこうするってこと、分かってたんだろ?」 挑戦的な笑みを浮かべ、十代が問いかけた。 「フン…」 それに答えることなく、カイバーマンはなのは達を見上げた。 「見事だったぞ、異世界の女。十代達と同じ、デュエリストとしての意志…見せてもらった。 貴様らがこの先その意志を絶やすことがなければ、元の世界に戻ることも可能だろう。…できるな?」 「もちろん!」 なのはもまた、笑顔で応じるのだった。 (いや…あのまま行くと、なのはが鬼になっちゃうような…) 一方、修羅の表情を垣間見たフェイトは、何故か脳裏に般若の面を浮かべながら苦笑いするのだった。 「おのれぇぇ…迷惑なことしてくれるじゃないか…」 オレンジ色の影が、冒頭のアルティメットバーストの流れ弾をモロに受け大変なことになっていたのは、また別の話。 スバル「ねぇねぇ翔、ものすごくカッコイイロボットのカードがあるって本当?」 翔「え? それってひょっとしてステルスユニオンのこと? いやぁ~照れるなぁ~」 剣山「誰も丸藤先輩のことは褒めてないザウルス…」 次回 「勇者王対決! スバル対スーパーステルスユニオン!」 なのは「当然そんな話はないからね♪」 スバル「え~…」 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ
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カリムとシャッハは、キャンドルで薄明るく照らされるロマネスク様式に似た装飾の施された廊下を、 身長1メートル弱の小人の修道士の案内で進んでいた。 「ここは…奥の院?」 シャッハが周囲を見回しながら不安そうに言う。 「この場所は法王聖下以外立ち入り禁止では?」 カリムが尋ねると、修道士は頷きながら答えた。 「聖下のご意向です、それ以外はわたくしにも分かりません」 それを最後に黙ったまましばらく歩くと、鎧を思わせる教会騎士団の制服を着た、弓形のデバイスを持つ 上半身女性・下半身蛇の生物と、剣型のデバイスを持つ六つ腕の生物が門番を努める真紅のカーテンの 壁の前で立っている部屋にたどり着く。 「わたくしの案内はここまでです、ここから先は奥の院の使いの者が参ります」 修道士が二人に頭を下げて部屋を出ると、人蛇型生物の門番が空間モニターを開いて何か操作をする。 するとカーテンが開いた後、重々しい駆動音と共に壁が割れる。 その先にあるのは、ダクトやケーブルが無数に張り巡らされた、同じ教会内とは思えないハイテクな設備 の数々。 あまりにも異質な光景にカリムとシャッハが息を呑んでいると、通路の奥からセクター7エージェントを 示す黒いスーツを着込んだ、彼女らと同じくらいの身長のバッタを思わせる大きな目をした、茶褐色の 肌色の生物がやって来た。 「カリム・グラシア様とシャッハ・ヌエラ様でございますね」 二人が頷くと、エージェントは付いてくるようジェスチャーで示す。 「では、こちらへどうぞ」 本局ビルNMCCの一角に作られた会議用の広い部屋で、シモンズはJS事件関係者の呼び出しの状況について 報告を受けていた。 「こちらはスプールス、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ両者から承諾はいただきました」 曇りガラスの間仕切りの向こうでなのは達が食事しているのを横目に、シモンズは報告に頷いて自分の側の 状況をシルに伝えた。 「こっちもOKだ。後は長官及び局長の到着と、第97管理外世界からの報告を待つ」 シモンズがそう言ってモニターを切ると、今度は別の空間モニターが開く。 「こちら第97管理外世界」 そう言ってモニター上に現れたのは、黒いサングラスに黒スーツの五十代後半の白人男性。 「どうした?」 「実は、“聖王の器”の件で困った事になりまして…」 白人エージェントは無表情のまま、“困った事”について報告を始めた。 「何の前触れもなくいきなり現れてヴィヴィオを連れて行くって、一体どういう事なんですか!?」 高町士郎が厳しい表情で言うと、桃子も同調して抗議する。 「そうですよ、なのはの大切な娘を一人だけにするなんてとんでもない!」 二人に詰め寄られた黒スーツにサングラスの髭を生やした黒人男性は、両手を上に挙げながら説明する。 「申し訳ございませんが、これはミッドチルダの国家機密に触れる問題であり、関係者でないあなた方を同席 させる訳にはいかないんですよ」 黒人エージェントの説明に対して士郎がピシャリと反論する。 「ここは管理外世界で我々は日本人だ、あなた方の法を守る義務はこちらにはありませんな」 士郎に続いて桃子も追い打ちをかけてくる。 「どうしてもヴィヴィオを連れて行くと言うのであれば、なのはをこちらに呼んで下さい!」 二人の剣幕に黒人エージェントがたじろきかけた時、シモンズと連絡を取っていた白人エージェントが現れた。 「今、責任者と通信が繋がりましたので、そちらでお話頂けますでしょうか」 エージェントがそう言うと、携帯電話に擬装された次元世界間信端末を士郎に手渡す。 「もしもし?」 士郎が声をかけると、シモンズの官僚的な声が端末から聞こえてきた。 「初めまして、こちらは元老院議長及び聖王教会法王直属の政府組織、セクター7エージェントのシーモア・ シモンズです」 「初めまして、高町なのはの父の高町士郎です」 互いに形式的な挨拶を済ませると、シモンズは早速本題に入る。 「当方のエージェントからお聞きしましたが、“聖王の器”の身柄を―――」 「あの子は“聖王の器”ではなく、“高町ヴィヴィオ”です」 士郎の指摘に対し、シモンズはヴィヴィオの名前を言い直して話を続ける。 「失礼いたしました。“高町ヴィヴィオ嬢”の身柄をこちらへ引き渡す事を拒否されているとか?」 シモンズの質問に対して、士郎も負けじと反論する。 「当然でしょう、いきなりやって来てヴィヴィオを連れて行くと言い、説明を求めたら機密事項のため 教えられないと言われて、普通納得できますか!?」 士郎の糾弾に対して、シモンズは突き放すように冷然と回答した。 「申し訳ございませんが、これはミッドチルダの国益、つまり、―――極単位に及ぶ次元世界の人々の安全に 関わる問題―――であり、そちら様の事情は関係ありません」 シモンズはそこで言葉を切ると、警告の意味を込めてより低い声で言う。 「どうしても拒否するというのであれば、それ相応の手段を取らざるを得ませんが…」 シモンズがそう言うと同時に、二人のエージェントはスーツを開いて拳銃型のデバイスを示す。 それに対して士郎の目がすっと細められ、シモンズ同様低い声かつゆっくりした口調で答えた。 「そう言うのであれば、こちらも対抗手段を取るまでです。そちらも、相応の覚悟を決めて頂きましょうか?」 そう言いながら、裾に収めている寸鉄をそっと手の上に乗せる。 両親の代わりに開店準備をしながら様子を見ていた恭也と美由希も、状況の急変を見てそれぞれ苦内と 棒手裏剣に手をかける。 両者の間で殺気が飛び交い、今にも激突しそうになったその時。 「やめて!」 一触即発の不穏な空気は、少女の突然の叫びにたちまち吹き飛ばされた。 全員が声のした方を振り向くと、ヴィヴィオが息せき切りながら士郎たちのところへ駆けて来るところであった。 ヴィヴィオはそのまま士郎の前へ庇うように飛び込むと、エージェントに訴える。 「お願い、一緒に行くから誰も傷付けないで!」 「ヴィヴィオ!?」 「駄目よヴィヴィオ!」 突然の事に士郎は狼狽え、桃子はヴィヴィオの肩に手を掛けてエージェントからヴィヴィオを守ろうとする。 「士郎おじさん、桃子おばさんありがとう。でも、私のせいでみんなが争う事になるのだけは嫌なの」 ヴィヴィオは桃子の手に優しく握り返し、淋しげに微笑みながら言葉を続ける。 「なのはママと戦った時みたいな事はもう絶対に嫌! だからお願い、行かせて!」 ヴィヴィオの切実な叫びに高町家の面々は言葉を失い、エージェントたちもどうしたものかと考えあぐねていると、 凛とした雰囲気の、落ち着いた女性の声がその場を救った。 「…私が同行しましょう」 「リンディさん?」 美由希がそう言いながら振り向いた先には、買物篭を下げたリンディが入口に立っていた。 「あなたは?」 白人エージェントが尋ねると、リンディは空間モニターを開いて自分の身分証明証を表示させる。 「時空管理局次元部局執務統括官を務めますリンディ・ハラオウンです。 高町ヴィヴィオの後見人でフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官と、第56機動部隊司令官クロノ・ハラオウン 提督の母でもあります。 わたくしも関係者と考えて頂いて問題はないと思いますが、いかがですか?」 白人エージェントは少し考え込んだ後、口を開いた。 「上と相談しますので、少々お待ち下さい」 報告を受けたシモンズは、こちらに向かっているバナチェクとゲラー長官へ直ちに連絡を入れる。 長官とバナチェクは少しの間話し合った後、リンディがヴィヴィオの同行者となる事を了承した。 翠屋手前の通りに停車している黒の1987年式フォード・クラウン・ビクトリアに、ヴィヴィオとリンディは 乗り込もうとしていた。 「リンディさん。ヴィヴィオの事、くれぐれもよろしくお願いします」 見送りに出た士郎が深々と頭を下げると、リンディは頷いて答える。 「分かりました、お孫さんは私が責任を持ってお守りします」 ドアが閉められると、パワーウィンドウが下ろされてヴィヴィオが顔を出す。 「桃子おばさん、また来るからね」 「いつでもいらっしゃい、美味しいお菓子を沢山用意してあげるから」 桃子が答えた後、運転席から白人エージェントがヴィヴィオに声をかけた。 「では、出発します。危険ですので窓を閉めてシートベルトを付けてください」 その言葉に、ヴィヴィオは手を振りながらパワーウィンドウを閉める。 派手なスキール音を立てながら急発進した車が見えなくなると、桃子は不安げな表情で士郎の方を振り向いて言う。 「本当に大丈夫でしょうか…?」 それに対して、士郎は励ますように笑顔で答えた 「なのはは強く育ってくれた、その娘なんだから心配ないさ」 食事を終え、これからの話についての不安を話し合っていると、シモンズとバナチェクにゲラー長官、そしてゲンヤ 少将にはやて達が入室する。 長官が来た途端、なのは達は一斉に起立して敬礼する、長官はそれに返礼しながら言った。 「ご苦労、楽にしてくれ」 なのは達が席に座ると、ゲラー長官達も空いている席に座る。 「相性がいいのかね?、君たちとは何かと縁があるが…」 苦笑気味にゲラー長官は呟いた後、シモンズが列席の面々に宣言する。 「それでは、JS事件関係者の方々にが揃って頂きます」 それと同時に空席の上に次々と空間モニターが名前及び役職名付きで表示される。 聖王教会からカリム達二人。 本局ビルで出動待機状態のティアナとスバル。 クラウディアからはクロノ。 そして、リンディにヴィヴィオ…。 「ママ…」 不安そうなヴィヴィオがモニター映っているのを見た瞬間、なのはは血相を変えて席を立ち、シモンズに詰め寄る。 「あ、あなた方はヴィヴィオまで巻き込むつもりですか!?」 なのはの抗議に対し、シモンズはそれまで通り何ら臆する事なく答えた。 「“JS事件関係者”に聞いて頂かねばならない事柄…と、申し上げた筈です。 特にあの子は“聖王の器”という事件の中核部分ですから、尚の事こちらの話を聞いて頂かねばなりません」 言葉に詰まったなのはは怒りも露わにシモンズの顔を睨み付ける、シモンズの方はまったく意にも介さぬ冷厳な 表情で、なのはを見返していた。 「高町一佐、まずは彼らの話を聞こう」 ゲラー長官が諭すように言い、心配したヴィータが腕を掴むと、なのはは席に戻る、 だが、怒りに燃える目はずっとシモンズを睨み付けていた。 「ご説明に入る前に、まずはシャリオ・フィニーノ二等陸曹から今回盗まれたファイルの件について話して頂け ますでしょうか?」 バナチェクがそう言うと、シャーリーは急いで立ち上がった。 「は、はい」 シャーリーは 「私とマリエル技官が発見したクラッキング信号は、わずか十秒足らずで局内のネットワークに侵入し、物理的 に切断されるまでの数分足らずのうちに最重要データベースから情報を盗みました」 シャーリーは一度言葉を切ると、横に座るグレンに振り向く。 グレンは管理局の最高幹部やエース級の魔導師たち囲まれてに相当緊張していた。 「グレン、ファイルの内容を出して」 「え!?…わ、わかった」 突然話を振られたグレンは慌てて頷くと、空間モニターを開いて分析したデータを表示する。 「信号そのものは手がかりとなる物がまったくない為に現時点では解析不可能ですが、その中に埋め込まれている データがミッドチルダのものであるなら、内容を調べる事は出来るはず…と考えました。 その分析結果がこれです」 “次期次元航行部隊配置計画 警告:統合幕僚会議幹部以下の局員の閲覧を禁ず” “JS事件 極秘報告書 警告:元老院大法官、管理局長官、最高法院々長以外の閲覧を禁ず” 表示されるデータの数々に、長官は驚愕と怒りの入り混じった表情で言った。 「局内部どころか、最高法院や元老院の極秘情報も含まれているのか!?」 静かだが怒気のこもった呟きに、シャーリーは内心の動揺を必死で隠しながら答えた。 「はい。ですが“敵”がもっとも関心を持っているのは、それらのデータではありません」 そこで、シャーリーはバナチェクとシモンズの方を振り向く。 「あなた方セクター7の管轄下にある“銀の魔神”でした」 「ありがとうございました、フィニーノ陸曹」 バナチェクが席に座るよう身振りで示すと、シャーリーはそれに従って腰を下ろした。 「“銀の魔神”について説明するには、まずミッドチルダと“古(いにしえ)より代々続きし偉大なるベルカ王 の国”略称“古代ベルカ”の歴史について説明する必要があります」 バナチェクは背後に控えるシモンズに頷くと後ろに下がる、後を引き継いで前に出たシモンズは説明を始めた。 「失われし先史時代、ミッド・ベルカ両国は驚異的に発達した科学技術でもって次元世界を制するニ大国として 次元世界の覇権を争った事は、普通校初年科の生徒でも知っている事です。 それを可能としたのは、次元世界間を航行できるまでに至った、科学及び魔導技術の驚異的な発達であります」 シモンズの背後で空間モニターが開くと、普通校の歴史教科書に出てくる聖王の即位式を描いた油彩画と、元老院 の討議の様子を撮影した写真が表示される。 「学校では、聖王家による政教一致の王制国家である古代ベルカと、その迫害から逃れてきた土着の民族で作られた、 政教分離の共和制国家であるミッドチルダの宿命的対立が、皮肉にも両国の飛躍的発展をもたらした…と、教えられて います。 実はそれとは別に、もう一つ発展の原因となったものがあります」 「もう一つの原因…ですか?」 四人乗りの水素動力式カートの後部座席に座るカリムが、モニター越しにシモンズへ質問する。 「そうです。確かに両国の対立は技術の発達の理由ではありますが、その原資となるものが別に存在するという事です。 現在でも次元世界間の航行は実用化するには、技術的に極めて難しいと言われています。 それを、今から数千年も前に、古代ベルカただ一国だけが成功させました。 現在、数百の次元世界が次元航行船を保有するぐらい技術が普及しておりますが、それはミッド建国の父祖たち の中に、技術の開発に関わった技術者が相当数いたからです。 これは余談ですが、ミッドが次元世界の中心国的地位になったのも、ベルカ滅亡後唯一の次元航行技術保有国 として普及に努めてきた事実があるからこそです」 シモンズが言い終えると同時に、高さ3メートル・幅6メートル程の合金製の頑丈な自動隔壁の前で、カリム達の 乗ったカートが停車する。 「古代ベルカの驚異的な発展を可能にし、そして恐らく滅亡の本当の原因ともなった秘宝中の秘宝が、この奥に 眠っています。 これをご覧になるのは、歴代の聖王教会法王と元老院大法官以外では皆様が最初です」 バナチェクがモニターを開き、カリム達と一緒に居るエージェントに指示を出す。 「いいぞ、開けてくれ」 エージェントが空間モニターを操作すると、隔壁の電磁ロックが次々と外れ、ゆっくりと開いていく。 隔壁の奥に拡がる光景に、全員が息を呑んだ。 そこは高さ50メートル、幅100メートル程の四方形の広大な格納庫。 天井から床まで無数のダクトや電源ケーブルが走り、何十人もの技師たちが庫内を歩き回り、空間モニターを操作 したり同僚と様々な問題について話し合ったりしている。 その中にあって一際目を引く異質な存在が、格納庫中央部の台座に鎮座していた。 高さ25メートルの、無影灯の強烈な光に照らされる白銀の巨人である。 全身分厚い氷に覆われていてすぐに動く事はない様に見えるが、それでも名状しがたい威圧感が全身から放たれている。 その禍々しさに、列席の面々全員は悪寒を感じた。 「これが…“銀の魔神”…」 シャーリーが呆然としたまま呟くと、シモンズは頷いて話を再開する。 「そうです。これこそ、聖王家が代々守り、聖王教会と元老院が我々セクター7を作ってまで隠してきた古代ベルカ 最大の秘宝にしてタブー。暗号名“銀の魔神”であります」 モニターの映像が全身から顔にクローズアップされる。目に光はないが、凶悪を絵に描いたような面相により、 只でさえ禍々しい雰囲気がより濃厚になっていた。 「体に付いていた氷のサンプルの分析結果から、魔神が古代ベルカに飛来したのは、今から約2000万年前と見られています」 「2000万年前って、えーと…」 スバルが指を折って何か数え始めると、ティアナが諭すように言った。 「先史時代より遥か昔、私達のご先祖もこのくらいの大きさしかなかった時代よ」 そう言いながら、拳を作って大きさを教えたティアナに、スバルは照れ笑いをしながら頭を下げた。 そんな二人のやり取りを横目に、バナチェクが話を続ける。 「古代ベルカ戦争から聖王戦争に至るまでの間に開発された質量兵器や魔導兵器は、この魔神から得られた テクノロジーを基にしていたと、我々セクター7は分析しています」 「我々ヴォルケンリッターもそうだと?」 シグナムの質問にシモンズが黙って頷く。 「勘弁してくれよ、こんなおっかないシロモノからあたしらが生まれたなんて、考えるだけでもゾッとする」 「まぁまぁヴィータちゃん」 ヴィータが苦み走った表情で言うと、シャマルが苦笑気味に宥める。 「何故です、何故隠さねばいけなかったんですか?」 カリムがバナチェクとシモンズに詰問した時、入口の方から、賢者らしい落ち着いた老人の声が、それを制した。 「カリムや、トムばかりを責めんでおくれ」 二人の教会騎士を伴って現れたのは、身長70センチぐらいの質素なローブを纏った、緑色の肌をした耳の尖った老人。 「聖下!」 聖王教会法王“ヨルダ・ベラ・トゥトゥナイゼム”に、カリムとシャッハは急いでひざまづく。 「よいよい、楽にしなさい」 二人が立ち上がると、法王は両手で杖を付き、魔神を見上げながら言う。 「責めを受けるという点では、この老いぼれも同じ事。しかし、この事はそうまでしてでも隠さねばならなかったのだよ。 これが、ジェイル・スカリエッティのような狂人に渡ってみたまえ」 カリムとシャッハはハッと息を呑むと、法王は頷いて話を再開する。 「そう、JS事件とは比にならない…事態、“戦争”になるであろう」 法王の言葉に、列席した者は皆表情が強張り、場の空気が冷えて行くのを感じた。 フレンジーは倉庫の天井から、魔神を見下ろしていた。 眼下には大勢の人間が居るにも関わらず、ラジカセにはトランスフォームしていない。 天井を走るケーブルやダクトに露出した機械類がカムフラージュの役割を果たしていて、その姿に気付く者は 居ないからだ。 フレンジーは手近のケーブルに手を差し込むと、それを通じて外へ信号を送った。 傍目には只のノイズにしか見えないし、時間にして一秒以下なので施設及び教会全体に張り巡らされたセンサー 類にも引っかからない。 送信された内容は以下の通りだった。 “フレンジーよりスタースクリームへ、<メガトロン様>を確認、この信号を目印に 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはVS轟轟戦隊ボウケンジャー クロス元:轟轟戦隊ボウケンジャー ExtraTask 01 異界の来訪者 ExtraTask 02 隠されし術 ExtraTask 03 新たなる冒険者(1)(2) 魔法少女リリカルなのは―MEIOU クロス元:冥王計画ゼオライマー 第一話 冥王、黄昏に降臨す 第一話―B 少年は牢獄に己を失う フェイト外伝――月下光影―― クロス元:忍~Shinobi~ ※完結 第一話 朧月 第二話 嵐 第三話 双雷 最終話 暁光 なのは×錬金 クロス元:武装錬金、からくりサーカス、鋼の錬金術師 シャンバラを往く者 第1話 郷愁/黒死の蝶 第2話 海鳴の途絶える日/Link 第3話 真理の扉/からくり~しろがね 第一幕 開幕ベル 第4話 『光』(前半)(後半) LYRICAL THAN BLACK クロス元:黒の契約者 最終更新:09/12/21 予告編 第一話 彼女の空を星は流れ……(前編)(前編―B) 第二話 彼女の空を星は流れ……(後編)(後編―B) 第三話 新星は夜天の空を焦がし……(前編)(前編-B)(前編-C) 4/20 作者:LTB3話を微修正。次回は5月上旬を目標に。 拍手感想レス :LYRICAL THAN BLACKは設定に違和感がなくて面白いです!! :黒の契約者が面白いです。待ってます。 :塞がれた瞼から 流れ出した涙 :繰り返し蝕まれる 理性と血の欠片 :気づいたんですが、海鳴市って東京にはないんですよ。 :うっわーーw続き読みてぇーっつか、あの黒契をよくくっ付けたなーw最高b コメント欄 感想、ご質問等ございましたらお気軽にお使いください この続きをどれだけ待ち望んでいたか・・・・ -- 名無しさん (2009-12-21 23 33 43) LYRICAL THAN BLACKの続きが見れて、本当にうれしいです! これからも体調に気をつけて頑張ってください! -- 名無しさん (2009-12-22 08 05 36) DARKERきた!これで勝つる!! -- 名無しさん (2009-12-22 21 02 07) なのは×錬金の方もぼちぼちでいいので更新お願いします -- 名無しさん (2009-12-22 23 00 14) 遅かったじゃないか・・・感動してしまったよ -- 名無しさん (2009-12-23 13 22 00) 更新される日を楽しみに待ってました。これからも期待しています。 -- リョウ (2009-12-23 21 03 35) いつか来ると信じていた -- 名無しさん (2009-12-24 09 41 56) 待ち続けていた意味があったなぁ……おもしろいよ! -- 名無しさん (2009-12-24 23 53 40) 待っていたよ。この瞬間を -- 名無しさん (2009-12-27 13 08 45) ジャック・サイモンはまだですかー? -- 名無しさん (2009-12-31 16 58 18) ボウケンジャーのクロス、今更だけど続き気になるw;^^ -- 名無しさん (2010-01-01 11 17 09) 新たなる冒険者っていうのが気になるね? -- ボウケングリーン (2010-01-01 22 51 19) コメントありがとうございます、少々質問等に返信を。中断中の作品が気になる方もいらっしゃるようで、大変申し訳ありません。 恥ずかしながら、上記のどちらも、当時オリジナルの敵(ボウケン)や多重クロスを軽く考えていたのが中断の原因です。 錬金は特に長編になる上、ボウケン完結後と書きましたので、今からでも、しっかり固めてから再開したいと考えております。 ジャック・サイモンは次々回。 -- なのはVSボウケン (2010-01-02 23 34 53) 全く違和感なく読めてびっくりしました!続きをとても楽しみに待ってます!! -- 名無しさん (2010-01-05 00 47 19) ボウケンの続き、いつまでも待ってます! -- 名無しさん (2010-01-05 03 03 45) 個人的に話数の短いLYRICAL THAN BLACKを優先して欲しいですねww -- 名無しさん (2010-01-05 20 28 39) どうでもいい事なんですが、3話読んで気になったんですが、 風邪や花粉症と時差ボケは性質が違うのではないでしょうか?(契約者でもなるのでは?) 最後の黒さんは、警官に本当に聞きに行かれたらやばかった?これは次回で語られるんでしょうか。 -- 名無しさん (2010-01-21 21 43 33) 良かった…(つд`) 作者さんが生きてて… -- 名無しさん (2010-01-28 21 12 19) ハヴォックの話がどうなるか楽しみすぎる -- 名無しさん (2010-01-28 22 46 23) 時差ボケに関しては、今はらしくないミス、とだけ。 黒の発言は、店員がアパート隣室の黒人バボなので、口裏合わせを頼める――と思ってましたが、 改めて確認したらちょっと似てるけど別人でしたorz 何十回と復習したのに勘違いしてたようです。面目ない -- なのはVSボウケン (2010-01-29 00 44 24) DTBの雰囲気が消えずにうまくマッチしていました。続きを楽しみにしています。 警官が店員に聞きに行かれたら、たぶん黒は2人を連れて警官が聞きに行った隙にでも逃げれたのではないでしょうか。 -- 名無しさん (2010-02-01 02 52 12) 名前 コメント TOPページへ このページの先頭へ
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古代遺物管理部機動六課/Lost Property Riot Force 6 スターズ分隊/Forward Stars ライトニング分隊/Forward Lightning ロングアーチ/H.Q.Longarch 時空管理局陸士108部隊/Battalion 108 時空管理局本局/Administrative Bureau 時空管理局地上本部/Midchilda Center Office 聖王教会/Saint Church 一般/Ordinary People ルーテシア一行/Relic Weapon スカリエッティ&ナンバーズ/Unlimited Desire&Numbers
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次元世界と魔導の力 初出 Record01 次元の海には、いくつもの世界が存在する。治安維持組織である時空管理局の管理を受け、 文化交流を行なっている世界を「管理世界」、そうでない世界を「管理外世界」と呼ぶ。 そして管理世界のほとんどと、管理外世界の一部には「魔導」と呼ばれる独自のエネルギー運用技術が存在し、活用されている。 一般的に使用されている「魔法」もその一部であり、優れた術者が魔導師と呼ばれるのもここに由来する。 近年の魔導技術は科学と深く融合し、一般生活にまで深く浸透している。 ルヴェラ文化保護区 初出 Record01 管理世界においては、その土地に由来する自然や文化などを保護する目的で「保護区」設定が行なわれることがある。 自然保護区で自然環境や原生生物の保護がなされるように、文化保護区においては、その土地の文化や景観を損ねないよう、 先進技術に由来する物品や施設の持ち込み・建設が規制されている。 ルヴェラ地方は雄大な自然の景観や旧歴中期から続く閑静な町並みが保護指定されており、観光地として賑わっている。 インテリジェントデバイス 初出 Record01 魔法を扱う者たちが使用する「端末(デバイス)」はさまざまな機能や種別が存在する。 インテリジェントデバイスは自律した知能を持った端末であり、単独での魔法発動や自律行動などをはじめとした機能を持つ。 トーマの相棒スティードもこのインテリジェントデバイスである。 なお、通常の魔導端末はシンプルな術式構成言語で意思を伝えるが、スティードは通常言語で会話をできるように作られているようである。 実弾兵器 初出 Record01 ミッドチルダをはじめとする管理世界の「武装」はクリーンかつ威力・効果設定が容易な魔導武器に限定され、 こういった「実弾兵器」に対しては使用に強い規制がかけられており、 一般人や民間企業の警備員といった人々が所有・使用することはほぼ有り得ない。 だが、炸薬を使用して銃弾を撃ち出すこのタイプの銃火器は、管理外世界の多くではいまだ主流を占める武器であり、 密輸・違法使用の例は跡を絶たない。 ズーミングスキャナ 初出 Record01 撮影・観測に特化したデバイスであるスティードの基本機能のひとつ。 遠隔地の一部をモニタリングし、音声も拾う。なおトーマが指を耳に当てているのは、音が外部から漏れないよう、 指先を伝導音子として使用しているためである。 念話 初出 Record01 一般的な魔法における、初歩中の初歩にあたる技術。思念内で言語化した言葉を対象に送り届けることで通信・会話を行なう。 ただしこの場面(リリィが研究所でトーマを呼ぶ)での「頭の中に響いた音声」は一般的な念話とは異なるようである。 魔方陣 初出 Record01 魔法を使用する際に描き出す術式方陣。魔法ごとに設定された回路を目視できる形で展開し、術式の制御や安定化を行なう。 はるか昔は媒介物(特殊な砂や液体など)を使用して実際に描いていたが、現在は魔力によって瞬間的に展開、 使用後には消失するタイプが一般的である。 アンロック 初出 Record01 錠前を解除する魔法。通常の建物や施設のロッキングユニットには、これらの一般的な解錠魔法に対する厳重な防御がなされており、 専門の技術者であっても、アクセスコードがなければ数十分~数時間かかるのが一般的だが、 トーマはこれをわずか数秒、ワンアクションで解錠している。 リアクティング 初出 Record01 可燃物に炎を近づければ燃えあがるように、媒体同士が近接・接触した際に特定の反応を起こす場合がある。 これらの反応を魔力によって制御・任意に発生させるのが魔法の中核となる技術だが、 トーマとリリィの間にも、何らかの特定反応が発生している。 なお、「瞳の痛みと激しい頭痛」は、網膜から入り込んだ圧縮情報が、脳に直接送り込まれた際に起こりうる症状である。 熱焼却処理 初出 Record01 危険な細菌・化学物質などを扱う研究所施設では、漏出災害を抑えるため、室内の熱焼却処理の設備が置かれる場合がある。 金属の沸点―数千度を超える熱―による焼却処理は細菌や化学物質のほどんどを無害化し、およそあらゆる生命体は生存を許されない。 プロテクション(Protection) 初出 Record01 ミッドチルダ式魔法において、ごく一般的な防御魔法。任意の範囲に防御膜を張り、衝撃・温度変化などから身を守る。 トーマとスティードのプロテクションは、外気温500~800度(一般的な施設火災での高温状況下)程度の炎熱化においても、 数分程度であれば、内部の人間を守りながら移動を行なえる防御力を持つ。 誓約(エンゲージ) 初出 Record01 現状で詳細は不明。リリィ・シュトロゼックの意思によって、トーマの体に影響を及ぼす「何か」が発生している。 この誓約によって、リリィの左手首とトーマの右手首、それぞれに銀の腕輪が発生しているのが確認できる。 戦闘装備 初出 Record01 戦闘や災害救助など、特殊状況下で活動する魔導師は、自身の魔力で作成した「バリアジャケット」と呼ばれる防護服を装備し、 付加した各種の防護機能やフィールド生成能力などで身を守る。 トーマのこの装備(マント装備かつノースリーブ、へそだし、篭手装備)は、バリアジャケットとは異なるもののようだが、 両手足に装備された金属様の防具など、戦闘向きの装備であることが推測できるほか、トーマ自身の髪や目の色の変色も確認できる。 ECディバイダー 初出 Record01 現時点で詳細は不明。実弾銃に大ぶりなナイフを融合させたような奇妙なスタイルの武器であり、 本体には「996」及び「React STROSEK」の刻印が刻まれている。 ディバイド・ゼロ 初出 Record01 現時点では詳細は不明。一般的な「砲撃魔法」に近い発露状態だが、射線上への貫通能力と効果距離が極めて高レベルなものであるのと同時に、 射線外にいた人員や車両に対してもなんらかの効力を発生させ、活動不能にするという効果が見てとれる。 執務官 初出 Record01 時空管理局における役職のひとつ。(所属部署の権限範囲内において)司法処理を執り行うほか、 指示された案件においての捜査・監査の権限をもつ。 事件捜査においては「捜査指揮・現場司令」のポジションで立ち回ることが多いため、 2人以上の執務官が同じ案件を担当することは比較的稀。 第18管理外世界 イスタ 初出 Record02 高温多湿の亜熱帯地方が多く存在する、自然溢れる世界。 独自性の高い野生動物と植物の宝庫であると同時に鉱物資源にも恵まれており、 それらの輸出が主要産業として知られている。 第3管理世界 ヴァイゼン 初出 Record02 ミッドチルダと隣接する世界であり、環境もよく似ている。 首都近郊は利便性の高さと、郊外の住宅地の閑静さから「住みたい街」としてよく挙げられる。 都会からのアクセスのよい手ごろな山と湖が多く存在することでも知られており、登山家やキャンパーたちに人気の高い土地でもある。 LS級艦船ヴォルフラム 初出 Record02 時空管理局本局・海上捜査部の次元航行船。 大気圏内での長時間運用を想定されているため、次元航行船としては比較的コンパクトなLSサイズにまとめられている。 機動六課 初出 Record02 かつて「JS事件」と呼ばれる、ミッドチルダ首都を襲った未曾有の都市型テロを予見し、その対策にあたった地上部隊。 部隊長・八神はやてを筆頭に、戦技教導隊や本局法務部・航空武装隊からエース級の魔導師たちをはじめ、若い才能も多く集めて編成されていた。 もともと期間限定の試験部隊であったため、JS事件終了後に解散。メンバーはそれぞれ古巣の部隊や、新しい天地へと分かれていった。 次元通信 初出 Record02 ミッドチルダやヴァイセンなどの都会には埋設アンテナなどの通信網が整備されているため、 個人使用の携帯機でも次元通信を行なえるが、ルヴェラのようにそれらの設備がない地方では、 次元通信を行なえるのは、教会・医療施設・通信管制施設など、特定の施設のみとなる。 地域警邏 初出 Record02 管理局員の中でも、地域に常設された「ボックス」と呼ばれる駐在所に滞在し、巡回警邏を行なったり、 事件・事故などの際に現場に出勤したりする隊員たち。 巡回警邏を行なうようすから、「おまわりさん」の愛称で呼ばれることも多い。 アギト一等空士 初出 Record03 本局航空隊所属の一等空士。一般常識の範囲を超えて「小柄」なのは、彼女の出自によるもの。 通常の人間サイズになることも可能だが、勤務の現地においてはこちらの方が便利なことも多いとのこと。 本局航空武装隊 初出 Record03 「航空武装隊」は、空戦魔導師で編成された航空部隊であり、管理世界の各地に存在する。 中でも「ミッドチルダ首都防衛隊」と「本局航空武装隊は」いずれも厳しい審査によって選ばれた、優秀な戦力が集う部隊である。 ヴァイゼン遺跡鉱山崩壊事故 初出 Record04 新暦75年、ヴァイゼン北西部の鉱山街「アミア」が住人もろとも壊滅するという事件が発生した。 壊滅の理由は局地地震と有毒ガスの流出によるものとされ、住民約230名はほぼ全滅した。 地震とガス流出が深夜に起きたこと、周囲の地形が盆地であり、有毒ガスの逃げ場が無かったことなどが、 この悲惨な災害の原因とされているが、建築物の破壊状況、一部の遺体の損傷状態の不自然さなどを指摘し、 「事故ではなく、事件である」とする声もある。 バードショット・シェル 初出 Record04 銃身の周囲に生成したエネルギー弾(ショット・シェル)を、散弾として広範囲に撃ち出しているのが確認できる。 対人殺傷力は「極めて凶悪」なレベルであると推測できる。 シルバーバレット(Silver Barrett) 初出 Record04 射撃魔法に似た、エネルギー弾。高速度で撃ち出される白銀の閃光が確認できるのみで、弾丸形状は確認できない。 フレシェット・シェル(Flechette) 初出 Record04 広範囲に拡散する散弾と異なり、比重と貫通力の高いエネルギー弾を数発束ねて撃ち出している。 着弾防御 初出 Record04 両者の前に、至近距離からの直撃に耐えるためのフィールドが生成されているのが確認できる。 「攻撃しながらの防御」には高度なスキルが必要となるが、 両者(トーマとヴェイロン)はいずれも高いレベルで「撃ちながら守る」を行なっている。 これが彼らの能力によるものなのか、武装などの外的要因によるものかは、いまだ不明。 クローグラブ 初出 Record04 ヴェイロンの装備品。硬質金属の爪と、掌に取り付けられた火炎噴射口で構成された近接武器。 ナパームファング 初出 Record04 クローグラブで掴んだまま、掌の火炎噴射口から噴射する液化燃料と火炎によって、対象を焼滅させる攻撃。 掴まれたのはトーマの右手だが、トーマは噴射の一瞬に利き手をかばい、右手を振り解き、左手で防御している。 クローグラブの性質的には「直撃」とは言えない状況ながら、 トーマの左腕は防具ごと機能停止レベルまで破壊されていることから、その威力がうかがえる。 シルバーハンマー(Silver Hammer) 初出 初出 Record04 砲撃魔法に似たエネルギー直射砲。先の「ディバイド・ゼロ」とは性質の異なる砲撃のようである。 治癒 初出 Record04 魔導技術による肉体治療が、通常「生きている」組織を回復・治癒させるのみにとどまり、 火傷・壊死・切断などによって「損失」した部位を回復させることはできない。 それら損失部位の治療のためには移植や人工筋肉・人工皮膚などの素材か、 それらの部品の代替となるものをゼロから生成して癒着させるような、極めて高位の魔導技術が必要になる。 2枚の切り札 初出 Record04 航空戦技教導隊・高町なのは一等空尉と、港湾特別救助隊のスバル・ナカジマ防災士長。 この2名は機動六課時代の「師弟」であり、スバルは、なのはのひとり娘の友達でもある。 かつての空の英雄と、現役の一流陸戦魔導師。八神はやてが切り札として用意した、2枚のエースカードである。
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―――9 クラナガン市第11区ホルテンマルス通り。 陸上部局機動一課第18師団226陸士部隊は、スィンドル及びドロップキックなどのドローンたちと、文字通り死闘を演じていた。 胸部の砲塔を展開して次々と砲弾を撃ち込んでくるドローン部隊に対して、陸戦魔導師たちはバリアやシールドだけでなく、時に素早く移動し、 時に建物や車を盾代りにして攻撃を避ける。 そして、砲撃が止むのと同時に部隊全員の攻撃魔法をドローン一体に集中させて確実に倒して行くという、ゲリラ戦的な方法で本局ビル方面 へ侵攻するドローン部隊を足止めしていた。 しかし、ドローン部隊と陸士部隊の火力と装甲の差は如何ともし難く、陸士部隊は後退に次ぐ後退を強いられていた。 「くそっ、何なんだあいつらは!!」 ワゴン車の陰に隠れている、恐竜のような顔立ちのと鱗の肌をした陸士が、デバイスにカートリッジを装填しながら悪態をついていた。 「何が大型ガジェットドローンだ、車に変形する人型GJなんて見たことも聞いた事もねぇぞ!」 その隣でベルカ式ポールスピア型デバイスを構えた、脳が見える透明の頭をした三本指の陸士が、攻撃が止んだのを機に頭を少し上げると、 ドロップキックがこちらへ砲口を向けるのが見えた。 「おい、逃げろ!」 仰天した表情の陸士が、同僚の腕を引っ張って歩道へ逃げ出すのと同時に砲弾が車を襲い、直撃を受けた車が大爆発して路上を転がって行く。 路地に伏せて爆発を避けた、鶏冠のついた四本の大きな皺の走った頭をした指揮官を務める陸曹は、陸士二名を路地に呼び寄せると、回復した ばかりのモニターに向かって怒鳴りつける。 「こちら陸士226部隊、これ以上は持ち堪えられそうにないぞ! 増援はどうしたんだ!?」 モニターの向こうでも、通信担当の士官が、同じくらい大きな声で怒鳴り返してきた。 「現在EW-TT隊がそちらに急行している、もう少し我慢してくれ!」 「了解した!」 陸曹はそう言ってモニターを切ると、懸命に闘っている部隊へ振り向いて笑いながら声と念話の両方で呼びかける。 「応援が来るぞ! 後ちょっとの辛抱だ、踏ん張れ!!」 その言葉に力を得た魔導師は、了解の意を示す陸士部隊共通の掛け声を一斉に上げた。 「ウーオッ!」 戦車に蜘蛛のような多関節脚を六本くっ付けたような形の、“歩行戦車型アインヘリアル(Einherial Walking―Tank Type 略称EW-TT)” 五両は、本局ビルNMCCより指示のあった場所へ急行しつつあった。 「前方に爆炎を確認!」 前席の、亀の甲羅のような頭に虎の様な牙を口から生やしたパイロットからの報告に、穴のような耳と肩に棘を生やした、部隊長を務める一尉の 階級章を付けた士官がペリスコープ用のモニターを開く。 すると、ロボット軍団と追い詰められつつある陸戦魔導師部隊の激しい攻防戦が、目の前に映し出された。 「ありゃ一体何だ?」 今まで見た事のない人型ロボット兵器に、車内の乗員がざわめき始める。 「落ち着け!」 部隊長が周囲の窘めるように大声を上げる。 効果覿面。その一喝に、車内のざわめきが水を打ったように静まり返った。 「何であれ目の前の敵は叩き潰す、只それだけの事よ! カートリッジロード!」 一尉の指示に、砲手が155ミリ砲弾サイズのカートリッジを砲型のデバイスに装填すると、EW-TT車体真下の路面に、ミッド式魔方陣が展開 される。 「来たぞ! 増援部隊だ!!」 EW-TTを見た陸士が仲間たちに大声で呼び掛けると同時に、隊長の眼前にEW-TTから空間モニターが開かれる。 「こちら機動一課 第89師団 陸士209部隊 重魔導車両部隊だ。これから敵GD部隊に対して攻撃を行う、至急後ろに退ってくれ」 連絡を受けた陸士部隊は、ロボット軍団に対して牽制の攻撃魔法を放ちながら、EW-TTの後ろへ後退する。 「陸士部隊の後退完了、目標までの距離、約百五十百メートル!」 土偶のような、縄のよれたような皺だらけの顔に、上唇にサーベルタイガーのような二本の牙を持つ観測手兼砲手の報告を受けて、一尉は矢継ぎ 早に部隊へ指示を出す。 「全隊、照準を本車真正面の人型GD部隊中央に!」 一尉の指示を受けて、EW-TTの全車の照準がスィンドルたちの中央部にセットされる。 こちらに向けて歩行戦車がやって来た事に気付いたドローンは、攻撃目標を目前の陸士部隊からEW-TTに変更する。 「敵部隊より攻撃が来ます!」 砲手から報告を受けた一尉は、即座に命令を下す。 「プロクテション!」 デバイスがフィールドを張るのと同時にスィンドルとドロップキックがEW-TT目掛けて一斉に砲撃する。 だが、砲弾はフィールドに弾かれるか、突き抜けても車体を貫く程の力はなく、虚しく跳ね返るばかり。 「ディバインシューターセットアップ!」 隊長の号令一下、砲手がデバイスのチャンバーレバーを引くと、EW-TTの砲口に紫色の丸い光が現れる。 「ディバインシューター、セット完了!」 砲手の言葉を受けて、隊長はEW-TT全車両に命令を下した。 「撃て(シュート)!」 その声と同時にEW-TT全車からまばゆい光の球が放たれた。 ドロップキックとスィンドルたちは回避行動をとるが、迸る魔力が嵐となってドローンたちを巻き込んで行く。 回避が間に合わなかったドローンのボディを突き抜け、周囲の仲間を巻き込み、吹き飛ばしながら、ディバインシューターはしばらくの間路上を荒れ 狂っていた。 魔力の嵐が収まり、舞い上がっていた誇りが落ち着くと、魔導師たちをあれ程苦しめていた二足歩行の巨大ロボットの大群が、今や物言わぬ スクラップとなって横たわっていた。 「ほう」 メガトロンは腕を組んで感心したように頷きながら言う。 「エネルギーを収束させて、強力な弾丸として撃ち出す…か。ひ弱な炭素生物にしては中々知恵が回るようだな」 「ですが所詮はチビどもの玩具、我々が本気を出せば一捻りですよ」 スタースクリームがそう言って唾でも吐くように口からオイルを飛ばすと、メガトロンは腕を挙げて窘めるように言う。 「その通りだが相手を甘く見過ぎると、思わぬところで足元を掬われるぞ」 メガトロンは次に、マイクロ波による無線通信でクラナガン市街へ呼びかける。 “ボーンクラッシャー” メガトロンから指名された大型の質量兵器用特殊工作トラックは、呼びかけを無視して百キロ以上のスピードで市内を暴走していた。 前方の車を自らの巨体で弾き飛ばし、時には建物に体当たりして崩壊させ、街灯や人間をボウリングのピンのように轢き倒していく。 車体のアームで乗用車を掴み、攻撃魔法を撃ち込みながら追って来る空戦魔導師部隊目掛けて投げつけるなど、傍若無人の限りを尽していた。 “ボーンクラッシャー、聞こえてる筈だ、返事をしろ!” メガトロンからより厳しい口調で詰問された時、ボーンクラッシャーは初めて返事をする。 “聞こえている、何か?” ボーンクラッシャー返事が来ると、メガトロンはクラナガン市街の地図を転送しながら指示を下す。 “敵が戦車を担ぎ出してきた、ドローンどもが苦戦しとるから片付けて来い。 場所は第11区のホルテンマルス通りだ” “了解” ボーンクラッシャーは簡潔に答えると、更に加速して魔導師たちの追撃を振り切り、目的地へと向かった。 NMCCの超大型空間モニターにはクラナガン市街の地図が表示され、市街各所で繰り広げられている陸・空戦魔導師部隊と正体不明のロボット 軍団の戦闘状況が、青と赤の矢印で表示されている。 その周囲を取り囲む無数の空間モニターには、市街戦の映像が映し出されていた。 ロボットからの砲撃を受けた魔導師が、木の葉のように吹き飛ばされるのが映った時、なのははレイジングハートのチェーンを強く握りしめた。 「焦るな」 なのはの焦りを察知したゲンヤが、諭すように言う。 「切り札ってものは、やたらと見せびらかすもんじゃねぇ、ここ一番って時に切るからこそ活きるんだ」 ゲンヤの言葉に頷き、内心の葛藤を必死に闘いながらなのはは答える。 「分ってます、分ってますけど……っ」 今度は長官が冷徹な口調でなのはに言った。 「自分一人で総てを背負えると思っているのか?」 自分でも思い上がりと意識している事を冷静に指摘された事に、なのはの表情が怒りを帯び、口調が自然と荒くなった。 「そんなつもりは……!」 「なのはちゃん!」 はやてがそう言って腕を抑えなければ、なのはは長官に食い掛っていたところであろう。 「も、申し訳ございません…!」 我に返ったなのはは、自分がしでかしかけた事の重大さを悟り、慌てて長官に頭を下げた。 「いや、いいんだ。気にしないでくれ」 長官は笑いながら手を挙げてなのはの謝罪を受け入れると、自分の眼前にあるモニターに目を向けながら小さくつぶやいた。 「私自身も同じ思いだよ、長官としてもっと出来る事があるのでは…? とな。 だが、実際に人手はあまりにも足りなく、示せる選択肢は極めて限られる…。 まったく、この世は思い通りならな事ばかりだな」 この呟きをゲンヤは聞いていたが、彼は何も言わなかった。 デモリッシャーの車輪をかいくぐりながら、チンクは苦内型の固有武装“スティンガー”を続けざまに投げつける。 総てデモリッシャーの顔で炸裂するが、相手は怯む気配すら見せない。 「チンク姉、だめだ。でか過ぎてあたしらの攻撃魔法じゃ埒が明かない!」 「あきらめるなノーヴェ!」 ノーヴェが歯ぎしりするノーヴェを叱咤するが、チンク自身も口の中で小さく呟いた。 「とは言え、こちらも手詰まりか…」 “チンク姉、聞こえる?” ディエチから念話で呼びかけられたチンクは、デモリッシャーの攻撃圏から一旦離脱し、等距離を取って監視しながら返事する。 “どうしたディエチ?” チンクからの問いかけに、まるで躊躇うかのように少し間が空いた後、ディエチが念話を再開する。 “あの化け物は…悪いけど、多分私達の手には負える相手じゃないと思う” チンクも悔しそうに歯噛みしながら、ディエチの意見に同意する。 “そうかも知れん、だが他の部隊も手が回らない以上、我々だけで対処するしか…” その返答を予期していたのだろう、ディエチからの返答はチンクの考えを首肯しながら、自分の考えを伝えるものだった。 “うん、そうだね。それで…倒せなくても、もしかしたら動きを封じる事が出来るかも知れない。 チンク姉、そいつを何とか海側におびき寄せられない?” “難しい事を言ってくれるな…” チンクは苦笑しながらも、ディエチに了承した旨を伝える。 “分かった、何とかやってみる” チンクが答えるのと同時にデモリッシャーの後頭部が開き、中から数十発のミサイルが一気に発射された。 「いかん! 全員散開!!」 それを見たチンクが大声で指示を出す。 空へ上がったウェンディとチンク、そして地上を全力で疾走するノーヴェ目掛けて、ミサイルが獲物に群がるピラニアの如く追ってくる。 「誘導弾ッスか!」 逃げ切れないと悟ったウェンディは、振り向くとISを起動させる。 “フローターマイン” デバイスが声を発すると、ピンク色に光る数十個の魔力球がウェンディの前にカーテン状に展開される。 ミサイル群が突き抜けようとすると、球は一斉に爆発を起こし、そこにまともに突っ込む形なったミサイルも全弾誘爆を起こした。 「ウェンディ、無事か?」 スティンガーでミサイルを防いだチンクが、ウェンディの横で並列飛行しながら尋ねる。 「大丈夫ッス!」 ウェンディが親指を挙げて笑顔で返答するのを確認すると、チンクは次に地上へ眼を向ける。 「ノーヴェは?」 それに応えるかの様に、エアライナーに乗ったノーヴェがこちらへ向けて昇って来るのが、二人の眼に写った。 「敵GD部隊、完全に沈黙!」 砲手と各車両から同じ報告を受け取った部隊長は満足げに頷く。 「ここからもっとも近い戦場はどこか、本局に問い合わせてくれ」 指示を受けた通信士が本局と連絡を取り始めた時、運転士のモニターに突然“未確認車両接近中”という警告が表示された。 「隊長、前方より所属不明の車が一台近付いて来ます」 運転士は自分のモニターの映像を、部隊長のところに転送する。 そこには、危険物処理や災害現場の後片付け用に陸士部隊へ配備されている大型特殊車両が、ドローンの残骸を掻き分けながら近付いて来る のが映っていた。 「こちらは機動一課 第89師団 陸士209部隊所属の重魔導車両部隊である、貴方の所属を知らせよ」 EW-TTからの問いかけに返答せず、特殊車両は無言のまま近付いて来る。 「全車、ディバインシューターセットアップ!」 指示を受けたEW-TT全車の足元に、ミッド式魔方陣が再び展開される。 「撃て!」 ディバインシューターが発射されると、特殊車両は弾道を予測したかのように、反対車線へ移動して、魔力弾の直撃を避ける。 先程だったら、直撃しなくとも衝撃波で吹き飛ばされる筈だが、特殊車両はそんなもの存在しないかのように、悠然と走っている。 「なにっ!?」 その様子を見ていた部隊長が驚きの声を上げる。 まるでそれを合図としたかのように、特殊車両は急加速してEW-TTとの距離を瞬く間に詰めてくる。 「全車後退!」 部隊長がそう怒鳴るのと、特殊車両が変形を始めて“デストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャー”の正体を現したのは同時であった。 ボーンクラッシャーは、今や巨大な拳と化した障害物及び危険物除去用のアームを上から叩き付け、一両目のEW-TTをまるで蠅でも叩くかの ように苦もなく潰す。 潰した車両を掴み上げると、左側のEW-TTに叩き付けて横にひっくり返し、次に正面の三両目に投げ付けて擱座させる。 「ディバインバスター準備!」 目まぐるしく変わる状況に、部隊長は覚悟を決めた表情で指示を下す。 四両目を撃破したボーンクラッシャーが隊長機を掴んだ瞬間、部隊長は攻撃命令を出した。 「撃て!」 零距離で撃ち出された砲撃がボーンクラッシャーを直撃、まばゆいばかりの閃光と埃が舞い上がり、辺りを覆い尽くす。 車内の全員が固唾を呑んで見守る中、埃が晴れて来ると、EW-TTの必死の反撃を嘲笑うかのようにボーンクラッシャーが悠然と立っていた。 「そんな…!」 部隊長が絶句すると同時にボーンクラッシャーが再びEW-TTを掴んで軽々と持ち上げる。 車内の乗員は全員シートベルトを付けていたので放り出される事はなかったが、突然天地がひっくり返った事に恐慌を来たす。 ボーンクラッシャーは車両を軽々と持ち上げると、路上で民間人を退避させていた陸士部隊目掛けて放り投げた。 「こちらボーンクラッシャー。邪魔者は総て片付け―――」 結果は見るまでもないと判断して報告を始めたボーンクラッシャーは、いつまでも重車両が路上に激突する音が響かない事に不審を抱き、途中で 報告を止めて振り返った。 先程までドローン達と戦っていた魔導師部隊は、EW-TTが後を引き継いで以降通りに残って戦闘を眺めていた民間人の避難誘導を行っていた。 ボーンクラッシャーが車両部隊を潰し始めると、隊長は民間人の避難と同時に、手の空いた陸士達を、破壊された車両の乗員の救助に向かわせ ようとするが、その暴れっぷりに近づく事すら出来ない。 このままでは自分達もやられる。 そう判断した隊長は民間人の避難が完了次第、陸士達も退却するよう、断腸の思いで命じる。 最後の家族連れを連れて隊長達が退避しようとした時、ボーンクラッシャーが放り投げた車両が、こちらへと飛んで来るのが見えた。 「逃げろ!」 呆然として動けない家族連れと部下達に怒鳴りながら、我が身を犠牲にする覚悟で隊長はプロテクションを展開する。 その時、彼の横を猛スピードで人影が横切り、跳び上がるとEW-TTに飛び付いた。 路上に十数メートルの擦過痕を残し、重戦車並の重さのEW-TTを人影は一人で受け止めながら、隊長達の眼前で停止する。 白のジャンパーと短パン型のバリアジャケットに、ローラーブーツにハンドガード型のデバイスを装着した人影は、隊長に振り向いて尋ねる。 「機動五課 第58師団 陸士556部隊所属のスバル・ナカジマです。怪我はありませんか?」 問い掛けに隊長が頷くと、スバルはモニターを開く。 「シャマル先生、スバルです。第11区ホルテンマルス通りで民間人数名と陸士部隊を救助。負傷者もいる模様です。至急後方への搬送をお願いします」 「分かったわ。今、そちらに向かうから」 モニターから声がすると同時にスバルの横で緑色に輝く鏡が出現し、中から緑のロングドレスのバリアジャケットを着たシャマルが出て来た。 「次元部局タイコンデロガ医務官のシャマルです。皆様、こちらから避難して下さい」 シャマルの指示に従って家族連れは鏡の中へと入って行き、一方スバルはEW-TTのドアを力任せに引き開ける。 「大丈夫ですか?」 スバルの呼び掛けに、部隊長がシートベルトを外しながら答える。 「私は大丈夫だ、だが、部下が…」 スバルと部隊長が怪我をした乗員を外へ運び出していた時、砲弾が頭上のビルの壁を穿ち、破片が擱座したEW-TTの車体に降りかかる。 攻撃のあった方をスバルが見ると、新たにやって来たドローンたちが、砲撃しながら近付いて来るのが見えた。 「シャマル先生、敵GD部隊は私が食い止めますので、怪我人をお願いします」 スバルがそう言うと、シャマルがEW-TTの所へ駆けて来る。 「言っとくけど、危険と判断したら即座に撤収しなさい」 シャマルの言葉に、スバルは敬礼で返した。 EW-TTからこちらへ向かって来るスバルに、ドローン達は砲口を向ける。 雨あられと撃ち込まれる砲弾をスバルはジグザグ運動で回避し、通りの左端に立っていたスィンドルの足元に蹴りを入れて仰向けにひっくり返す。 隣にいたドロップキックが砲撃するが、スバルは跳び上がってそれを回避し、弾は倒れたスィンドルを木っ端微塵に吹き飛ばす。 スバルはそのままドロップキックの肩に飛び乗ると、背中をナックルダスターで殴り付ける。 後ろからいきなり強く突き飛ばされる形になったドロップキックは、砲を乱射しながらグルグル回り、周囲のドローンを次々とスクラップにしていく。 背中にいるスバル目掛けて、ドローン達が一斉に飛び掛かる。 レッゲージがドロップキックの背に飛び付き、ニ体は縺れ合って路上に倒れる。 しかし、その時にはスバルは再び宙を舞っており、スィンドルの頭上に降り立つと脳天にリボルバーキャノンを叩き込んで粉々に粉砕する。 火花を放ち、身体を小刻みに震わせながら倒れたスィンドルの上に、スバルは悠然と降りる。 後方から別のドローン達がやって来て砲口を開いた時、ボーンクラッシャーがその内の一体を拳で殴り倒す。 “手を出すな! こいつは俺の獲物だ!!” ドローン全員に無線で命令すると、ボーンクラッシャーはスバルへ挑むように、真正面から対峙する。 ドローンを殴った事と威圧感たっぷりに睨み付ける姿。 相手をガジェットドローンと同様の自動兵器と考えていたスバルは、そのあまりに人間的な反応に違和感を覚える。 と、ボーンクラッシャーはスバルに考える暇を与えさせないかのように、足元に転がっていたドローンの残骸を持ち上げて投げ付けてくる。 スバルは盛大なスキール音と共に急発進して残骸を避けると、走りながらカートリッジを再度装填する。 次々と投げられて来る残骸を左右やジャンプして避け、時には真正面に来たものを殴り落としながら、スバルはボーンクラッシャーへと迫る。 ボーンクラッシャーの方も路面の舗装を盛大に巻き上げながら急発進する。 進路上にある残骸や瓦礫を弾き飛ばしながら、ボーンクラッシャーは鉤爪をスバル目掛けて振り下ろす。 スバルは左にステップして回避するが、そこへボーンクラッシャーの右拳が襲ってくる。 それに対してスバルは拳の来る方向に身体を捻らせて攻撃を受け流し、勢いを殺さずに裏拳を肘の辺りに叩き込む。 勢いを流された上に攻撃をまともに受けたボーンクラッシャーは、バランスを崩して横向きに倒れ、その際拳が左側にあるオフィスビルの壁面を破壊する。 スバルは後退して、降って来る建物の残骸を避ける。 埃が濛々と巻き上がって姿が見えなくなったボーンクラッシャーに向けて、スバルは警告する。 「こちらは時空管理局陸上部局機動五課第778師団陸士71部隊所属のスバル・ナカジマです。 当該大型GDに搭乗しているパイロットに警告します、直ちに武装を解除し、GDより降りて降伏して下さい」 次の瞬間、土煙の中からボーンクラッシャーが飛び上がり、スバルの目の前に降り立つ。 「クソ喰らえだ! 止められるもんなら止めてみやがれ!」 中指を突き立て、ミッドッチルダ語で挑発するボーンクラッシャーに、スバルは面食らった表情で素っ頓狂な声を上げる。 「しゃ、喋った!?」 ボーンクラッシャーは、唖然とするスバルを嘲笑う。 「お前らの言葉で話した事がか? 俺に言わせれば、手前ェら単純な炭素生物が言葉や道具を使う方が驚きだがな!」 スバルはその挑発には乗らず、相手がどんな動きを見せてもすぐ対応出来るように、構えを取る。 そんなスバルの様子に構わず、ボーンクラッシャーは言葉を続ける。 「スバル・ナカジマと言ったな? 冥土の土産に教えてやるぜ、俺はデストロン軍団破壊兵ボーンクラッシャーよ! よぉーく覚えとけ!!」 前へ 目次へ 次へ